日本の課題は「人口、ナショナリズム、教育」 『2050年の世界』編纂者が日本の未来に警告

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問題は、それが日本にどう影響するか。足元では尖閣諸島問題がある。大洋の岩場をめぐって戦争を起こす意図など、エリート層はみな否定するだろう。だが、国家主義の衝動は制御しがたい。人的エラーの可能性もある。海上保安庁と中国海軍の衝突で死者が出たら、何が起きるか誰にもわからない。満州事変が思い出される。今後数十年は懸念の種だ。

中国の軍事支出は35年に米国を抜く。台湾をめぐり米中が戦争する可能性はないと思うが、周囲に中国、北朝鮮、ロシアと3つの核保有国がある日本は地政学的にリスクを抱えている。

人的資源が最も重要

国力を考える場合、石油や鉄鉱石、森林、水産物などの自然資源は重要だが、最も重要なのは人的資源だ。とりわけ自然資源がほとんどない日本にはそのことが当てはまる。戦後、日本の経済的な奇跡は日本人のすばらしい生産加工技術で成し遂げられた。人的資源はなくならない。問題はそれをどう開発するかだ。

John Andrews●英ケンブリッジ大学、ロンドン大学院卒。ガーディアン紙を経て『エコノミスト』へ。寄稿や著書も多数。

科学分野のノーベル賞(物理学、化学、医学生理学)の日本人受賞者は15人しかいない。人口が日本の7%しかないオーストリアよりも少ない。日本だけでなく中国でもそうだが、欧米に比べると権威やコネがなくては学界で出世できないという問題が関係している。

初等教育が弱い米国が圧倒的な競争力を持っている理由が2つある。新しいアイデアを許し、競争させるのが可能なことと、移民を受け入れる意志があることだ。

非常に優れた中国人や日本人、あるいはインド人やパキスタン人を受け入れることで、世界一の大学、科学、そして経済活動が維持されている。

高齢化する日本が活力を保つ答えは、明らかに移民の受け入れだ。ただ、心理的、文化的に抵抗感が強い。実現可能性には疑問符をつけざるをえない。

(撮影:今井康一 =週刊東洋経済 2013年1月12日号)

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