アローラ退任、孫社長「変心」までの22カ月 「欲が出てきてわがままで続投」は本当か?

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そもそも「後継者候補」という孫社長の言葉を、額面どおりに受け取ってもよかったのだろうか。

ソフトバンク総会でも存在感を示した社外取締役の永守氏。発言で会場は大爆笑となった(撮影:風間仁一郎)

アローラ氏がグループ入りした14年当時、孫社長は米携帯大手TモバイルUSの買収を米政府当局に阻まれようとしていた時期だ。「自信をなくし間違った手を打ってしまったとずいぶん後悔した。寝られない夜を過ごした」。意気消沈していた孫社長の言葉である以上、割り引いて聞くべきだったのかもしれない。

社外取締役の永守氏は「孫社長の言うことは、ホラとウソの混ざったようなものだから、あまり信用しないほうがいい」と語る。これはソフトバンクの株主に向けた発言だったが、アローラ氏に忠告しているようにも聞こえた。

「わがまま」が本当なら、今後の人材獲得は困難

アローラ氏は総会に取締役として列席しなかったが、冒頭、孫社長に促され、演壇の袖であいさつ。「孫社長はどんどん若返り、今後5年、10年とソフトバンクを牽引する情熱とエネルギーを取り戻した」と苦笑いを浮かべた。

10分足らずの発言を終えたアローラ氏だが、孫社長への会釈もなく、舞台を去った。孫社長はその消えゆく背中に「サンキュー、ニケシュ」と小さな声で語りかけた。

19歳のとき「60代で社長をバトンタッチする」と決めた孫社長。今回、60歳で潔く禅譲する考えを改め、69歳まで延長する。これによって後継者問題は当面先送りされた。

しかし、今後アローラ氏のような超トップ級の人材を、再び招聘することはできるのか。「自分のわがまま」(孫社長)で後継候補を失った結果、人材獲得の道を自ら狭めてしまった感が否めない。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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