「王様は裸だ!」と言える人、周りにいますか

追認バイアスから自由なチームが腐敗を防ぐ

『レッドチーム思考』の著者、ミカ・ゼンコは、アメリカの超党派組織、外交問題評議会(CFR)のシニア・フェローで、安全保障と軍事戦略を専門にする研究者だ。彼はその研究の中で、アメリカの軍や諜報機関がこの15年程、レッドチームを急速に体系化し、その手法が民間企業にも広まっていることに注目した。そして、CIA長官から企業幹部、またスーパーハッカーまで、200人を超えるレッドチーム実践者へのインタビューを行い、さまざまな分野での実例を収集した。本書では、その中から17の実例を選りすぐり、どんなときにレッドチームが成功し、またどんなときに失敗するのかを詳しく描いている。

失敗の原因は、反対意見を口に出せない環境そのもの

『レッドチーム思考 組織の中に「最後の反対者」を飼う』(文藝春秋)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

軍と安全保障の分野で活用され、実践されてきたレッドチームの手法は、これまではめったに共有されず、いわば秘密のベールに包まれていた。これほど幅広い分野の実例を、ここまで綿密に内側から明らかにしたのは、本書が初めてだ。

レッドチームは、アフガニスタンやイラクで失敗を経験したアメリカ軍の指揮官が、まず組織運営に根づかせた。なぜならば、その失敗の原因は、「悪魔の代弁者」を組織に組み込めていなかったことにあったからだ。アメリカ陸軍は2004年、レッドチーム的な思考を軍人に教育するための「レッドチーム大学」(外国軍事文化研究大学)を創設したが、その参加者は年々急増している。本書の著者、ミカ・ゼンコも、数少ない民間人の一人として、その教壇に立っている。

組織の様々な失敗を、組織が縦割りのサイロに分割され相互の連絡がなくなってしまうことに求めた『サイロ・エフェクト』(ジリアン・テット著)は、日本のさまざまな識者が取り上げたが、この『レッドチーム思考』も、組織運営術に新たな光を当てる作品として、多くのビジネスパーソンに読まれることになるだろう。

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