日本株は本当に割安と言えるのか
日経平均1万円台定着の条件(2)

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米国企業に比べ依然収益性低い日本企業

外為市場では経常黒字縮小などを背景に、円の値下がり観測が勢いを増す。半面、「不透明な海外情勢などを踏まえると、円を売って外貨を買う“リスクオン”の動きが本格化するとは考え難い」(三菱UFJリサーチ&コンサルティングの五十嵐氏)との指摘もある。

「海外への生産拠点移転、分散などが進んでいることから、90円台まで円安ドル高に振れるようだとむしろ、“痛み”も出てくるのではないか」(富国生命投資顧問の櫻井祐記社長)。

政治の変革、デフレ解消、そして、円安トレンドへの転換による日本経済活性化への“期待”をハヤし、急騰した株式相場。今年は実態面での裏付けを伴うかが試される。期待先行にとどまるようだと、失望売りのかさむリスクも高まる。

株価の再評価を促すためには、日本企業の収益力向上への努力も欠かせない。日本株の水準自体はなお割安だ。「株価キャッシュフロー倍率(PCFR)の世界平均との比較では、日経平均に2500円程度の上昇余地がある」(証券アナリストの白石茂治氏)。しかし、日本企業の株主資本利益率(ROE)は12年度予想ベースで6.1%。米国の16.5%を大幅に下回っている。

足元の株高で東証1部企業全体のPBRは1倍に戻った。株価が解散価値を下回るという“異常な”状態からは脱したが、個別株で見ると依然、1倍割れのまま放置された銘柄が少なくない。

PBRは「株価収益率(PER)とROEの積」に分解できる。“万年低PBR株“が目立つのは、ROEが低いことの証左といえる。野村證券の伊藤氏は「株価変動リスクなども考慮すると、7%前後のROEがあるのが投資をする際の必須条件。同水準を大きく下回る銘柄は投資の対象にならない」とクギを刺す。日本株が全て割安だと考えるのは大きなリスクがある。

松崎 泰弘 大正大学 教授

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まつざき やすひろ / Yasuhiro Matsuzaki

フリージャーナリスト。1962年、東京生まれ。日本短波放送(現ラジオNIKKEI)、北海道放送(HBC)を経て2000年、東洋経済新報社へ入社。東洋経済では編集局で金融マーケット、欧州経済(特にフランス)などの取材経験が長く、2013年10月からデジタルメディア局に異動し「会社四季報オンライン」担当。著書に『お金持ち入門』(共著、実業之日本社)。趣味はスポーツ。ラグビーには中学時代から20年にわたって没頭し、大学では体育会ラグビー部に在籍していた。2018年3月に退職し、同年4月より大正大学表現学部教授。

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