485系特急の「ラストラン」報道は間違いだ "国鉄の象徴"は現役で定期運行している!

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特急「いなほ」のE653系電車(写真:36arts.com 前田デザイン事務所 / PIXTA)

新潟地区もかつては485系が縦横に走り回っていたのだが、老朽化が進んだため、首都圏(常磐線)から転用されたE653系電車に置き換え。新潟~秋田間の特急「いなほ」や新潟~上越妙高・新井間の特急「しらゆき」で活躍している。

このE653系は、485系と同じく直流1500V、交流2万V・50Hz/60Hzの3つの電化方式に対応できる電車であり、新潟~糸魚川間でも運用できるのであるが、いかんせん常磐線での特急運用に必要な数しか製造されておらず、新潟地区へ転用するに当たっては、数が足りないという事態になった。それゆえ、新潟~糸魚川間の列車には古い485系も残し、その代わりのサービスとして、特急料金不要の快速としたものとも推測される。

なお、485系が最後まで充当されていた特急列車は、新青森~函館間の「白鳥」で、2016年3月の北海道新幹線開業を機に廃止された。「白鳥」という愛称を持つ特急は、かつて大阪~青森間を日本海縦貫線経由でロングランしていた列車であり、1本で毎日、直流1500V、交流2万V・50Hz/60Hzの3つの電化方式の路線を走り抜いていた、まさに485系の檜舞台のような列車でもあった。

残る485系の今後は?

E653系は1997~2005年に製造された電車であり、これ以上、増備されることもないと考えられる。また、JR東日本にはE653系と、特殊用途のE655系以外、交流60Hz電化区間で運転できる特急型電車はない。

そのため、485系快速も当面、安泰であると思われるが、車両そのものの老朽化が進んでおり、寿命が尽きるのも時間の問題である。

さて、車両の置き換えが課題となった時、JR東日本はいかに対処するのか。これまでは、国鉄の基本方針であった車両の標準化によって助けられていた訳である。地域の特性に合わせた車両を新製投入するようになったJRが、国鉄の遺産である複雑な電化区間にどう応じていくのか。列車運転系統の変更も含めて、注目していきたいところだが、何と言っても、485系の行く末が気になる。

土屋 武之 鉄道ジャーナリスト

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つちや たけゆき / Takeyuki Tsuchiya

1965年生まれ。『鉄道ジャーナル』のルポを毎号担当。震災被害を受けた鉄道の取材も精力的に行う。著書に『鉄道の未来予想図』『きっぷのルール ハンドブック』など。

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