日産とトヨタの拡大戦略は一体何が違うのか 「ゴーン流」は多様な提携に活路を求める
苦手を克服するだけでなく、強みも伸ばせる。両社ともに電動車の開発を手掛け、三菱自動車の「アウトランダー」は、電気自動車(EV)としてもエンジンとモーターを併用するハイブリッド車(HV)としても使えるプラグインハイブリッドで世界一の販売台数を誇る。日産・ルノー連合は各国の環境規制強化にEVで対応する方針で、現在最も力を入れている開発領域の一つだ。
日産は2010年末に世界初の量産EV「リーフ」を販売してEVのグローバルリーダーを自負してきたが、足元では新興の米テスラモーターズの熾烈な攻勢を受けている。日産の開発トップの坂本秀行副社長は「基礎技術から製品まで三菱自動車の電動化技術には可能性が相当ある」と話し、三菱自動車との提携は願ってもないチャンスだったといえる。共同で開発できれば、開発効率を引き上げられ、二重投資も回避できるとあって、メリットも際立つ。
規模は無視できない
弱みを克服し、強みを伸ばす、これをスムーズに実現する上でも規模は無視できない指標だ。自動運転や電動化、各市場向けの商品拡充など、膨れ上がる研究開発費を捻出する上でもスケールメリットは重要だ。三菱自動車は2015年に107万台を販売しており、日産・ルノー連合に上乗せすれば、959万台と3位の米ゼネラル・モーターズ(GM)に肉薄する。ゴーン社長は「規模は目的ではなく結果」と話すが、世界トップのトヨタ自動車や独フォルクスワーゲン(VW)と伍していくためには、彼らと同じ土俵の「1000万台クラブ」に入ることには強い執念があるはずだ。
台数のみならず、技術面でも優位に立ちたいというゴーン社長の思いも透けて見える。6月14日、日産は水素の代わりに植物由来のバイオエタノールを活用した燃料電池システムを開発したと発表。4年後の2020年の実用化を目指す方針も明らかにした。
燃料電池車(FCV)は車に充填した水素と空気中の酸素を化学反応させて発電した電気で走る車で、走行中に二酸化炭素を排出しない。次世代のエコカーとされ、量産車の発売ではトヨタとホンダが先行したものの、水素を供給するインフラの整備が課題となっている。日産が今回発表した燃料電池システムで用いるバイオエタノールはアメリカやブラジルでは既に普及していて、新たなインフラ整備の必要がない。1回の燃料補給でガソリン車並みの600キロメートルの走行が可能で実用化の段階では800キロメートル程度を目標としている。
この日の発表で一番驚いたのは坂本副社長が水素タンクを積んだ燃料電池車の実用化を凍結する考えを示したことである。日産・ルノーはダイムラー、フォードと3者で2017年の実用化を目標に、燃料電池の基幹システムを共同開発していた。今後は共同開発を続けても、実用化は個社の判断という考えだ。
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