日本の原発はテロに対する防御が甘すぎる 「秘密主義」に日独の専門家が警鐘

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航空機衝突などのテロ問題について原子力規制当局はどう対処しているのか。

原子力規制委員会の田中俊一委員長は6月15日の記者会見で、「(テロなどで炉心に著しい損傷が起きた場合に格納容器の破損による放射性物質の著しい放出を抑制するための施設としての)特定重大事故等対処施設(特重施設)の審査を厳密に実施している」と説明した。そのうえで「テロの問題については、情報公開によってよけいテロの危険性が高まるということもあり、特重施設の審査については非公表でやっている」「(審査を厳格に行っていることについては)お任せいただくしかない」とも述べている。

「航空機落下や意図的な衝突によっても原子炉が安全に止まって冷却機能が維持されることについては、(特重施設に関する審査の中で基準への適合を)求めている」とも田中委員長は説明している。ただし、「どういう飛行機がどのくらいの確度で、どのくらいのスピードなどといったことは申し上げられない」(田中委員長)という。

日本ではどの程度対策がとられているかも不明

このようにテロ対策がどれだけ有効かについては秘密に包まれている。その点では日米独も共通しているが、「米国と比べても日本は行政文書の黒塗りが多く、きわめて情報公開が乏しい」と佐藤氏は指摘した。情報公開がなければ、国民は電力会社が安全性向上対策に取り組んでいるか否かのチェックもできない。「情報公開しないことは、安全性の阻害につながる」(後藤氏)。

こうした議論を踏まえて佐藤氏は、「諸外国のプラクティスに照らして日本はこれでいいのかチェックしなければいけない」と強調した。

再稼働に向けた原発の安全審査が進む現在、テロ対策やその公表のあり方にも注目を向けなければならない。
 

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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