建機のカナモト、地方の公共工事遅延が直撃 北海道の優良企業が今期一転減益となる理由

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カナモトは公共工事の遅れや投資増に伴う償却負担で一転減益見込みとなる(撮影:今井康一)

国内の建設機械業界にも逆風が吹いているのか。

建設機械レンタル大手のカナモトが6月10日、今2016年10月期の上期(2015年11月~2016年4月)決算を発表するとともに、通期の利益予想を下方修正した。

上期決算は、売上高が前年同期比0.5%増の686億円、営業利益が同19.2%減の86億円、経常利益が同22.6%減の82億円、純利益が同23.9%減の49億円だった。通期予想については、売上高が従来予想の1339億円から1432億円(前期比7.4%増)へ、営業利益は163億円から146億円(同10.1%減)へ、経常利益は162億円から141億円(同12.8%減)へ、純利益は102億円から85億円(同10.5%減)へと修正。従来、営業微増益を見込んでいたが、一転、減益見込みとなる。

売上高を上方修正したのは、今年3月に買収した九州地区最大手の建機レンタル会社、ニシケンの連結化によるもの。今期は約7カ月分の損益が連結され、売上高で96億円、営業利益で8.3億円を織り込んでいる。のれんの償却は、5年償却で毎期5000万~6000万円にとどまる。

北海道や関西・中部などで先送り

一方、利益を下方修正した要因は、地方における公共工事の着工遅延と、設備投資増加に伴う減価償却費の想定以上の増加だ。

建機レンタルの需要は、大震災の復興需要のある東北、再開発需要が旺盛な首都圏で、引き続き堅調に推移している。しかし、カナモトが本社を置く北海道をはじめ、関西・中部、九州では、第3次補正予算執行の遅れや工事現場従業者の不足によって、公共工事が先送りされ、レンタル需要が想定以上に減少。上期の地域別建機レンタル売上高を見ると、前年同期比では東北地区が5%増、関東信越地区が6%増の反面、北海道地区は12%減、関西・中部地区と九州・沖縄地区はそれぞれ4%減となった。

下期(5~10月)の需要見通しについて、同社の金本哲男・副社長営業統括本部長は、「北海道は5~6月から底を脱し、前年同期比プラスに転じており、下期は3~5%増か。東北はほぼ前年並みか微減。関東は8%ぐらいの増加。関西が5~6%減。九州は来期には相当伸びるだろう」と見通す。

熊本地震の復旧・復興需要については、「今期はまったく織り込んでいない。来期以降もどのくらい数字として反映するのか調査中だ」と、現状では見通しが難しいとの考えを示した。ただ、同社は熊本地震の復旧活動に対応するため、子会社化したニシケンの本社(福岡県久留米市)内に、「九州地区災害対策本部」を設置。グループ企業との連携強化や各社の経営資源の効率的配分を行うなど、阪神淡路大震災や東日本大震災での経験を基に、総力を挙げて対応を進めている。今期中にも九州での建機レンタル増大という形で業績に表れる可能性が高い。

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