「米国に続き日本でも陰り見えた不動産市況」リチャード・カッツ
大和ハウス工業の樋口武男会長は、通信社ブルームバーグの記者に「住宅市場は危険な状況にある。私は不動産バブルがはじけたとしても驚かない」と語っている。日本の不動産市場に対する不安感は、アメリカのサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)危機によってあおられている感があるが、それでもこの数カ月、懸念は現実のものになりつつある。
11月16日時点で、TOPIX(東証株価指数)の不動産株指数は2月の高値から30%も下落した。不動産株は過去4年間に6倍も上昇している。J・REIT指数は2003年3月から今年の5月末にかけて2・6倍に上昇したが、それ以降、30%下落した。TOPIXの不動産株とJ・REIT指数の下落は、TOPIXの下落幅を19%も上回っている。
そうした状況にもかかわらず、なぜ外国人投資家は日本の不動産を買い続けているのだろうか。外国人投資家による投資額は07年上期に不動産に投資された3・4兆円の半分を占めている。ゴールドマン・サックスだけで1998年以降、2兆円も投資しているのである。さらにゴールドマン・サックスはニューヨークに拠点を置くエートス・キャピタルと合弁会社を設立して、日本の不動産会社シンプレクス・インベストメント・アドバイザーズの株式公開買い付けを行い、発行済み株式数の98・92%を取得した。重要なことは、ゴールドマン・サックスが競争した企業は日本企業ではなく、モルガン・スタンレーやメリルリンチ、ブラックストーンといった外国企業であったということだ。
外国人投資家は、不動産市場の全体的な上げ潮がすべてのボート(物件価格)を引き上げると判断しているわけではない。彼らは過去1年間に33%上昇した銀座など特定の物件と場所を厳選している。不動産市場が尻すぼみになったとしても、利益を上げることができると考えているのである。