三菱重工が自賛する もう一つの事業統合 フォークリフト事業統合で世界シェア拡大へ

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課題事業をテコ入れ

三菱重工にとって、フォークリフト事業の建て直しは経営課題の一つだった。先進国では屋内作業用途で排気ガスの出ない電気車が主流となり、伝統的なエンジン車を柱とする同社には逆風となっている。ピークの07年度に6万以上あった販売台数は前期4万強と低迷。オランダ工場の閉鎖などリストラ効果で12年度は久々に黒字化する見込みだが、販売面のテコ入れ、特に電気車の製品強化は不可欠だった。

ニチユは地盤とする国内需要が頭打ちで、本格的な海外開拓が大きな課題だった。「当社の将来は海外をどこまで伸ばせるかにかかっているが、顧客基盤などを考えると単独ではなかなか難しい。三菱重工と組んで海外販売を早期に拡大したい」とニチユの二ノ宮秀明社長は語る。

フォークリフトの世界需要は11年推計で94万台前後。新興国需要を背景に拡大基調で、特に中国は20万台超と日本の3倍強に成長、北米と並んで欧州に次ぐ巨大市場になっている。ただし、成長市場のアジアには世界中のフォークリフトメーカーが集まるうえ、特に中国では安価な製品を作る現地メーカーが数多く存在し、競争が激しい。

こうした中、国内企業では12年8月、官民ファンドの産業革新機構の協力を得て、日立建機と日産自動車がフォークリフト事業子会社を統合。生産拠点の集約などでコスト競争力を高め、新興国などの海外市場でシェア拡大を目指す。

海外市場をにらんだ再編という点では、三菱重工・ニチユもまったく同じ。「世界で競争に勝つにはやはり一定の規模が必要で、(世界シェア)8位辺りでチョロチョロやっているようではダメ。ニチユとの事業再編によって、一挙に世界で事業を伸ばしていく」と前川取締役。

「パーフェクト」と自賛する組み合わせで、世界シェア拡大につなげることはできるのか。

(週刊東洋経済 2012年12月29日-1月5日 新春合併特大号)

渡辺 清治 東洋経済 記者
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