復興財源もついに枯渇 国債増発の綱渡り 安倍政権に試練が訪れる
上げ潮派の軌道修正
かくも財政悪化リスクを冒しながら、アベノミクスは何を目指すのか。それは景気回復と低金利の維持を両立させるというナローパスだ。
振り返ってみると、小泉政権を継いだ06~07年の安倍政権は、公共事業拡大とは正反対の構造改革路線だった。増税反対・歳出削減と経済成長を通じた財政再建を主張する上げ潮派議員との関係が近く、当初の安倍政権は彼らが中枢を担ったことで「お友達内閣」とも揶揄された。
今回の大型公共事業や2%の物価目標設定といった政策方針はもともとは谷垣禎一前総裁の下で12年8月に固められたものだ。9月下旬に安倍総裁が誕生した直後には、安倍氏の側近である塩崎恭久代議士は「やるべきは産業競争力アップ、生産性向上。一時的な景気対策なんてダメ」と公共事業を一刀両断。金融政策についても「日銀だけでできることには限界がある」としていた。
ところが11月中旬に衆議院解散が決まるや、安倍総裁の物価目標2%や日銀の国債買い入れなどの発言はヒートアップ。明らかに以前と反対の方向に政策論はシフトした。
一部の上げ潮派議員も軌道修正している。安倍氏の側近中の側近とされる世耕弘成参院議員は安倍総裁誕生直後、次のように見通しを語った。「世界金融危機後の世論の変化を踏まえ、軌道修正は十分にありうる。公共事業も昔はすべて悪という感覚だったが、今では先進国平均まで減った。一方で防災が重要になり、公共事業は景気のカンフル剤になるのではないか」。
となると、もともと金融追加緩和にそれほど執心していなかった安倍総裁がなぜ変化したのか、その背景も見えてくる。公共事業での景気浮揚を狙うなら、国債増発は避けて通れない。景気回復に伴う長期金利上昇圧力を含め、放っておけば金利上昇で国債の利払いが急増し、経済が好転しても公的債務残高1000兆円の財政が困窮化してしまう。それを抑止するには、日銀による国債の買い入れ拡大による長期金利抑制が不可欠である。
経済が好転していれば13年夏の参院選も勝利の可能性が高まる。そしてその先にあるのは、景気回復と低金利維持のナローパスを実現しつつ、潜在成長率向上や次なる消費増税などで財政健全化を一段と強化することだろう。安倍政権の目指す道は相当な綱渡りになりそうだ。
(週刊東洋経済 2012年12月29日-1月5日 新春合併特大号)
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