海外旅行が過去最高 13年も勢いは続くか シニア層と円高が追い風

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その恩恵にあずかっている旅行会社の業績は好調だ。JTBの12年9月中間期の海外旅行部門売上高は前年同期比23.3%増となった。エイチ・アイ・エス(HIS)も12年10月期決算で過去最高益を更新しており、今期はさらにそれを上回る計画を立てている。

来年以降も海外旅行者数の増加は続きそうだ。13年は1900万人をうかがう高水準になるとみられている。格安航空会社(LCC)の新規就航などによる座席数の増加や運賃の低下が貢献する。

HISは12月にバンコクで国際チャーター航空会社を設立した。13年7~8月の初フライト就航が目標で、当初は中距離路線2機(座席数220~250席)で運行を開始し、数年後に6~10機へチャーター機の数を増やす計画だ。運行開始から5年後に3億ドル(1ドル=82円換算で246億円)の売上高を目指している。

一方、日本を訪れる外国人客も復調している。震災後の放射能の問題から11年は落ち込んだが、今年は10月までの累計が前年同期比38.0%増の703万人と10年の水準まで戻している。

ただし、少なからず懸念はある。一つは景気の先行きだ。旅行への支出は所得が低下した際に真っ先に削られやすい。さらに、このところの金融緩和への期待で為替が円安に傾き始めたことも海外旅行への逆風となりかねない。14年春の消費税増税を前に、高額支出の前倒しがある程度は期待されるものの、前回の増税前は、旅行支出への効果は限定的だった。

竹島や尖閣問題で下半期は落ち込んだ中国や韓国への渡航客の動向も依然として不透明だ。直近は回復傾向にあるとはいえ、高水準だった12年超えはハードルが高い。海外旅行は戦争や伝染病などの影響を大きく受けやすい。安倍新政権は今のところ領土問題をはじめとした日中・日韓外交について強硬な姿勢を見せており、尖閣諸島周辺で紛争が起きたり、中国本土で再びデモが発生したりすれば、渡航の回復に水を差すことになる。

旅行需要の先行きも新政権の舵取り次第、といえそうだ。

(撮影:尾形文繁)

(週刊東洋経済=2012年12月29日号

山川 清弘 「会社四季報オンライン」編集部 編集委員

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やまかわ・きよひろ / Kiyohiro Yamakawa

1967年、東京都生まれ。91年、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。東洋経済新報社に入社後、記者として放送、ゼネコン、銀行、コンビニ、旅行など担当。98~99年、英オックスフォード大学に留学(ロイター・フェロー)。『会社四季報プロ500』編集長、『会社四季報』副編集長、『週刊東洋経済プラス』編集長などを経て現職。日本証券アナリスト協会認定アナリスト、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト。著書に『世界のメディア王 マードックの謎』(今井澂氏との共著、東洋経済新報社)、『ホテル御三家 帝国ホテル、オークラ、ニューオータニ』(幻冬舎新書)など。

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