楽天、海外事業立て直しで問われる真の底力 ついにヨーロッパでも「取捨選択」を決断

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しかし、海外では、ライバルを引き離すような規模のECモールを育成できなかった。クレジットカードでは、海外企業の認可に時間を要するなど参入障壁が高く、サービスの相互連携が肝の楽天経済圏を十分に形成できなかった。例外は2008年にEC事業で初めて海外進出した台湾。有力ECモールの一角を占めており、クレジットカード「台湾楽天カード」の発行にもこぎ着け、ECモール事業との相乗効果が生まれているという。

2014年には1000億円前後の買収を2件行うなど、海外展開を急速に進めてきた楽天。だが今、力を注ぐのは、国内事業の競争力強化だ。海外事業を中心とした減損損失が響き、2015年度は8期ぶりの営業減益となった。一方で、国内の楽天市場を取り巻く環境も急速に厳しさを増しており、早急に手を打つ必要があるからだ。

最大のライバルであるアマゾンは、配送の超・高速化や有料会員向けの動画見放題をはじめ、サービスを急速に強化している。さらに同じモール型ECであるヤフーの「Yahoo!ショッピング」も、品数の充実とポイント還元の強化を武器に、新たな顧客の獲得を加速。自社クレジットカード「Yahoo!JAPANカード」との組み合わせで会員を囲い込むという、楽天と同じビジネスモデルで追い上げを図っている。

ポイント還元、サイト改修にも懸命

2月12日、2015年度通期の決算説明会で説明する、楽天の三木谷会長兼社長(記者撮影)

これに対し、楽天もポイント還元の強化を通じて、新規獲得と休眠会員の掘り起こしを進めている。ポイント費用の積極投下が利益を押し下げ、2016年度第1四半期(1~3月期)は、売上高が1803億円と前年同期比14%増だったのに対し、営業利益は229億円と同21%減で、増収減益となった。ポイント以外にも、楽天市場サイトの大規模な改修やEC事業者への営業態勢のテコ入れも行い、成長再加速のきっかけをつかもうと必死だ。

楽天は、2020年度に売上高1兆7000億円、非経常的な利益・損失を除いた営業利益3000億円と、2015年度比で2倍以上に引き上げる中期経営計画を公表している。三木谷社長は「目標というよりも計画。十分に実現可能性のある数値だ」と自信を見せた。が、やはりハードルは高い。

競争が激化する中、国内事業の成長を続けながら、数年来の経営課題となっている海外事業を今度こそレールに乗せることができるか。来期に創業20周年を迎える楽天は、真の底力が問われる局面を迎えている。

山田 泰弘 東洋経済 記者

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やまだ やすひろ / Yasuhiro Yamada

新聞社の支局と経済、文化、社会部勤務を経て、2014年に東洋経済新報社入社。IT・Web関連業界を担当後、2016年10月に東洋経済オンライン編集部、2017年10月から会社四季報オンライン編集部。デジタル時代におけるメディアの変容と今後のあり方に関心がある。アメリカ文学、ブラジル音楽などを愛好

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