「留職」とは? パナソニックに起きた熱の伝播

ベトナムで見た、ものづくりの底力

僕たちにとって記念すべき第1号の留職者となったのは、プロダクトデザインを専門とする技術者である入社10年目の山本尚明さん(当時33)だった。派遣先は、パナソニック側の担当者と山本さんを交えて慎重に検討と調整を重ねた結果、ベトナム中部の都市ダナンで活動するNGOに決まった。

派遣先のNGOのリーダーである男性(当時45)は、地域の課題解決に立ち上がった社会起業家だ。かつてベトナム戦争で難民としてタイに逃れた後、故郷に戻った彼はさまざまな社会問題を目にし、地域のために何かしなければと強く思ったという。そんな彼が目をつけたのは、調理環境の問題だった。電気がない地域の人たちはまきを使って屋内で調理をしていたため、有害な煙による目や気管支の病気が広がり、さらには森林の伐採も進んでしまっていたのだ。

ベトナムNGOリーダーと、製品化した「ソーラークッカー」

そこで彼は行動を起こす。「ソーラークッカー」という太陽光を活用した調理器具があると知ると、インターネットで徹底的に調べ上げ、独学で製品化を成功させた。以来彼は仲間たちとともに、10年以上にわたってソーラークッカーの製造・販売に取り組んできた。

しかし課題は、製作コストがかかりすぎて価格が下げられず、せっかくの製品が貧困層の人々には手の届かないものになっていることだった。そのため、今回の留職では、パナソニックの持つ「ものづくり」の力を活かして、このソーラークッカーの製造コストを削減することが山本さんのミッションとなった。

リモートチーム結成という新展開

このプロジェクトに取り組むことは、パナソニックという企業にとっても意味のあるものだった。東南アジアという成長市場で未来の顧客となる低所得層がどのような生活を送っているかを知る、絶好の機会だからだ。さらに言えば、「家電メーカーが無電化の村でいったい何ができるのか」という、日本のものづくり企業にとっての大きな挑戦とも考えられた。

すると、いざプロジェクトに取りかかろうとしたとき、パナソニック側の担当者からこんな提案を受けた。

「この経験を派遣される山本さん一人の学びにとどめるのはもったいない。社内に、日本から山本さんの活動をサポートするチームを作りませんか。そのほうが、現地への貢献も大きくなると思うんです」

そして、経営企画・マーケティング・知財管理・CSRといった多様な専門性を持つ30代の社員4名からなる「リモートチーム」が編成された。リモートチームのメンバーは事前研修から一緒に取り組み、山本さんの現地活動中もfacebookやスカイプを使って日本からサポートをすることになったのだ。これは僕たちも想定していなかった、すばらしい展開だった。

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