40歳のあの人は年金を一体いくらもらえるか 年収800万円でも月20万円にも達しない現実

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

電力系の会社に勤めるCさん(35)は、管理部門で働くサラリーマンだ。高校卒業後、現場で働いていたが、真面目な仕事ぶりが評価を受けて現在の部署へ抜擢された。現在は現場を統括する部署で資材調達の任務に当たっている。プライベートでは、会社に勤めながら大学に通い、学士号を取得するなど向上心にあふれた人物である。

そんなCさんが年金の相談に来たのは、誕生月に封書の定期便が届いたのがきっかけである。じつは35歳、45歳、59歳は節目の年齢と呼ばれ、年金加入期間におけるすべての記録が封書で送られてくる。どうして今年はハガキの定期便ではないの?と質問を受けたため、説明をするついでにCさんの将来の年金を試算してみた。

現在のCさんの現在の年収は額面で約600万円。毎年誕生月に届いている「ねんきん定期便」に記載のある、これまでの実績に応じた老齢年金額を聞いたところ、老齢基礎年金は年間約29万円、老齢厚生年金は年間約41万円だった。

65歳まで現在の年収が続いたと仮定すると、試算の結果、Cさんの65歳からの年金見込み額は現在の水準で年額200万~210万円となった。月額にすると約16万~17万円である。実はCさんの勤務先には充実した企業年金があるので、老齢年金と合算するとそれなりの金額になる。しかもCさんは若くから働いていることもあって今あるお金で生きていける仕組みを自然に身に着けている人でもある。年金額を聞いて「病気さえしなければ生活の心配ないな」と胸をなでおろしていた。

現在個人事業主であるDさん(66)は、高校を卒業して定年退職まで大手自動車メーカーに勤めていた。現在は老齢年金年額約180万円を受給しながら、売れっ子セミナー講師兼コンサルタントとして全国を飛び回っている。じつはDさんは40代後半にコンサルタント系の国家資格を取得し、以降20年以上にわたり、休日を利用して地道に活動していた。早い段階から週末起業をし、年金だけに頼らない収入源を準備してきたので、老後の充実した生活へすんなりとつなげることができた。

年金を納める現役世代の減少で

日本の年金制度は「仕送り型」だ。正式には「賦課方式」と呼んでいる。すなわち、現役世代が納める年金保険料を国が年金として高齢者世代へ支給することで成り立つ仕組みである。

Aさんの父親ぐらいまでは現役世代がたくさんいたので、当時のお年寄りは十分な年金をもらうことができた。ところが、現在は少子高齢化の影響で現役世代が減っているため、Aさんのようなこれからのお年寄りは年金だけで生活が立ち行かなくなってきている。

私たちが65歳になる頃にはどうなるのか?じつは状況は今よりさらに厳しい。国は少子高齢化を見越して2045年前後までに年金の給付水準を現在より約2割下げる方向で調整に入っている。月18万円のAさんの年金が30年後には約15万円程度まで下がる可能性がある。

私の所感では、就職から定年退職まで厚生年金に加入された方で、65歳からの年金額はおおよそ150万~200万円である。年金だけで老後を暮していくにはとても十分といえない額だ。繰り返しになるが、一流企業で年収800万円を稼ぐBさんですら65歳からの年金額は月20万円に達しない――Bさんは40歳で気付いて行動を起こした。あなたはどうだろうか?少子高齢化が進むこれからの時代、早く気付いて老後の準備を始めた人だけが充実した老後を送ることができるはずだ。

坂田 智浩 社会保険労務士/元・日本年金機構職員

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

さかた ともひろ / Tomohiro Sakata

社会保険労務士。元・日本年金機構(年金事務所)職員。2級ファイナンシャルプランニング技能士兼AFP。産業カウンセラー

1975年長崎県生まれ。東京大学工学部卒業、同大学院修士課程修了。素材メーカーに就職し主として新商品の研究開発職に携わる。在職中に産業カウンセラーの資格を取得。退職後、社会保険労務士を志し、受験1年目に年金事務所に入職し、年金給付を担当。年金事務所退職後も、複雑な年金制度を具体的に誰にでも分かりやすく伝える技術と、その人に合った年金受給を提案している。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事