スマホに復活する「タイムマシン経営」 回れ回れインターネットゴーラウンド

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日本のネットユーザーの動きは米国など海外とズレているとされ、「ニコニコ動画」のような日本独自のサービスが花開いた。加えて、「ガラパゴスケータイ」と呼ばれる高機能携帯がネット端末として進化を遂げ、日本独自のケータイネットビジネスが、まさにガラパゴス的に進化していたのだ。

10年代、スマートフォン時代に入り、モバイル端末・ネットサービスはグローバル化。TwitterやFacebook、LINE POP(エニパン)など、海外で先に流行っていたプラットフォームやサービスが、少し遅れて日本でもヒットするという事態が次々に起きている。海外の流行をいち早く察知し、そのまま日本に持ち込む「タイムマシン経営」が、再び、可能になってきている気がする。

……と意気揚々と拳を振り上げここまで書いていたが、タイムマシン経営再来という視点も、孫社長の受け売りだったことにさっき気づいた。孫社長はこの10月、米キャリア3位のSprintの買収を発表した会見時、スマートフォンの普及によって米国がモバイルインターネットで最先端を走り始めたことに触れ、「タイムマシン戦略の2サイクル目が始まる、スタートの時期にあると思う」と話していたと、さっき調べていて気づいた(しかも、自分が書いた記事に載ってた)。筆者も危うく、コラムネタでタイムマシン戦略を採るところだった……。

二番煎じの中に次の歴史を作るヒントがある

タイムマシン経営はありていに言えば、オリジナルの二番煎じを、海外や別のプラットフォームに載せ換えるという手法だ。それが可能なのは、オリジナル側の供給が、市場や需要の拡大に追いついていないタイミングに限られる。スマホ市場に焼き直しが目立つのは、市場が急成長しているという証しなのだ。

スマートフォン先進国の米国だけでなく、オンラインゲームに強い韓国などアジア諸国からも“輸入”できるネタはまだまだあるだろうし、国内でも過去にPCや携帯電話で流行したものをスマホに載せ換えるだけでヒットすることもありうるだろう。日本で過去にヒットしたネタを海外に持ち込み、グローバルなヒットを狙うこともできるかもしれない。

というか、スマホゲーム市場ではすでに、ものすごい速度でパクリあいタイムマシン戦略がとられている。1つゲームがヒットするとすぐに大量のフォロワーが現れ、そっくりなゲームシステムで二匹目のどじょう狙いに血道をあげる。市場はグローバルに広がっており、世界各国からプレイーヤーが参入。スマホゲームは家庭用ゲームに比べて開発期間が短く、一発当たれば大もうけできるだけに、タイムマシンのサイクルも急速だ。

市場の成長期には、あふれるほどの二番煎じの中に、次の歴史を作る新しいオリジナルが生まれる。日本のブログサービスは米国の焼き直しだし、mixiは当時の米国SNSを模倣して作られた。Facebookも過去のSNSをかなり模倣しているだろうし、LINEもカカオトークやViberをかなり参考にしていると思うが、それぞれターゲットユーザーに合わせた工夫を加え、オリジナルが届かなかったユーザーに届いている。

“丸パクリ”は品がないけれど、過去に当たったアイデアや、旧来のプラットフォーム上では陽の目を見なかったアイデアも、スマホに載せ換えれば新しいユーザーがつかめるかもしれない。スマホ市場では来年も、いろんな“タイムマシン”がきっと、見られるだろう。

岡田 有花 フリーライター

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おかだ ゆか / Yuka Okada

1978年、兵庫県生まれ。京都大学教育学部卒。IT系ニュースサイトITmediaの記者、Webベンチャーnanapiの編集者を経てIT・Web分野を中心に取材、執筆するフリーライター。

ITを切り口に、人の心、そして社会の有り様にまで踏み込み、取材される側の信頼を獲得してこそ書ける記事を執筆する。また、時に見せる体当たり記事の潔い姿でも名高い。

著書『ネットで人生、変わりましたか?』
(2007年、ソフトバンククリエイティブ)も刊行している。
Twitter @yukatan

 

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