竹中教授「日本のフィンテックがダメな理由」 米国は無審査でポンと5000万円貸してくれる
冨田:私は野村証券に7年勤めた後、今の会社を立ち上げました。野村証券では個人営業を3年、残りはプライベートバンクを経験しました。シンガポール勤務になり、現地の大学院に通って、ウェルス・マネジメントのプログラムを学んだのもこの頃です。
現在、ZUUオンラインという「金融のバーティカル(垂直)メディア」を運営しており、月間1000万PVを集めています。内容は、おカネのインテリジェンスを身に付け、リテラシーを向上させるための情報提供です。
リテラシーを高めるコンテンツを集積していくと、次の段階として知識をもとに実際の取引をしたい、購買判断をしたいというニーズが出てくるので、「ZUUシグナル」という株のポートフォリオを判断するサービスを提供したり、ファイナンシャルプランナーを探せるサイトを運営したりしています。
山口:私が運営している「グッチーポスト」というネットメディアは、日本だけでなく米国でも同じ情報を提供しており、3万人の会員から毎月会費をいただいているのですが、米国の会員からの会費は、ペイパルという決済サービスを利用して受け取っています。かれこれ10年近くお付き合いしているのですが、最近驚いたことがあるのです。
審査なしでポンと5000万円を貸す米フィンテック企業
ペイパルは、うちの会員からの入金経路を知っているので、どれだけのキャッシュフローがあるのかを、おおよそ把握しています。その情報を分析して、特に書類をかわすこともなく、審査を受けるわけでもなく、ポンと5000万円を貸してくれるのです。こういうサービスを見ると、日本は「まだまだだな」という印象を受けますね。
竹中:たとえば、Airbnbを旅行業の範疇でとらえることに無理があるのです。これは旅行業ではなくソーシャルネットワーキングビジネスです。Uberも同じです。
その観点でフィンテックを見ると、これは金融というよりも、ビッグデータを扱うテクノロジー企業です。では、なぜ今、山口さんが言ったようなペイパルのサービスが日本で行われていないのかというと、ビッグデータの基盤が弱いからです。
実は、銀行は物凄いビッグデータを持っているのですが、それが一連の金融関連業法の「硬い殻」で閉ざされていて、実際のビジネスに生かされていないのです。ただ、AI(人工知能)がどんどん普及するなか、20年後には今の仕事の4割がなくなると言われています。銀行の融資業務や窓口業務もなくなるでしょう。そういう状況ですから、銀行の未来は、今あるビッグデータとテクノロジーをいかに融合させ、新しいビジネスを展開できるかにかかってくるでしょう。
冨田:対個人の与信判定をするにあたって、その人が将来、どのくらいのキャッシュフローを生み出せるのかという点が重要になるわけですが、そのデータは銀行ではなく人材派遣会社が持っているかもしれません。あるいは、携帯電話会社が持っている個人の位置情報は、「頻繁に海外旅行に出かけている」、「よく高い店で買い物をしている」など、その人の消費行動を分析することによって、与信判定のスコアリングに役立つでしょう。銀行と他業態が持つデータを組み合わせれば、かなり高い与信判定ができるようになるはずです。
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