竹中教授「日本のフィンテックがダメな理由」

米国は無審査でポンと5000万円貸してくれる

冨田:私は野村証券に7年勤めた後、今の会社を立ち上げました。野村証券では個人営業を3年、残りはプライベートバンクを経験しました。シンガポール勤務になり、現地の大学院に通って、ウェルス・マネジメントのプログラムを学んだのもこの頃です。

富田 和成(とみたかずなり)株式会社ZUU代表取締役社長 兼 CEO。一橋大学卒業。野村證券のプライベートバンク部門で活躍後、退職。2013年にZUUを創業。この間2011年シンガポールマネジメント大学ビジネススクール卒業

現在、ZUUオンラインという「金融のバーティカル(垂直)メディア」を運営しており、月間1000万PVを集めています。内容は、おカネのインテリジェンスを身に付け、リテラシーを向上させるための情報提供です。

リテラシーを高めるコンテンツを集積していくと、次の段階として知識をもとに実際の取引をしたい、購買判断をしたいというニーズが出てくるので、「ZUUシグナル」という株のポートフォリオを判断するサービスを提供したり、ファイナンシャルプランナーを探せるサイトを運営したりしています。

山口:私が運営している「グッチーポスト」というネットメディアは、日本だけでなく米国でも同じ情報を提供しており、3万人の会員から毎月会費をいただいているのですが、米国の会員からの会費は、ペイパルという決済サービスを利用して受け取っています。かれこれ10年近くお付き合いしているのですが、最近驚いたことがあるのです。

審査なしでポンと5000万円を貸す米フィンテック企業

山口 正洋 (ぐっちーさん、やまぐちまさひろ)投資銀行家。慶應義塾大学経済学部卒業。丸紅を経てモルガン・スタンレー、ABNアムロ、ベア・スターンズなど欧米の金融機関を経て、ブティック型の投資銀行を開設。M&Aから民事再生、地方再生まで幅広くディールをこなす一方、「ぐっちーさん」のペンネームでブログを中心に大活躍

ペイパルは、うちの会員からの入金経路を知っているので、どれだけのキャッシュフローがあるのかを、おおよそ把握しています。その情報を分析して、特に書類をかわすこともなく、審査を受けるわけでもなく、ポンと5000万円を貸してくれるのです。こういうサービスを見ると、日本は「まだまだだな」という印象を受けますね。

竹中:たとえば、Airbnbを旅行業の範疇でとらえることに無理があるのです。これは旅行業ではなくソーシャルネットワーキングビジネスです。Uberも同じです。

その観点でフィンテックを見ると、これは金融というよりも、ビッグデータを扱うテクノロジー企業です。では、なぜ今、山口さんが言ったようなペイパルのサービスが日本で行われていないのかというと、ビッグデータの基盤が弱いからです。

実は、銀行は物凄いビッグデータを持っているのですが、それが一連の金融関連業法の「硬い殻」で閉ざされていて、実際のビジネスに生かされていないのです。ただ、AI(人工知能)がどんどん普及するなか、20年後には今の仕事の4割がなくなると言われています。銀行の融資業務や窓口業務もなくなるでしょう。そういう状況ですから、銀行の未来は、今あるビッグデータとテクノロジーをいかに融合させ、新しいビジネスを展開できるかにかかってくるでしょう。

冨田:対個人の与信判定をするにあたって、その人が将来、どのくらいのキャッシュフローを生み出せるのかという点が重要になるわけですが、そのデータは銀行ではなく人材派遣会社が持っているかもしれません。あるいは、携帯電話会社が持っている個人の位置情報は、「頻繁に海外旅行に出かけている」、「よく高い店で買い物をしている」など、その人の消費行動を分析することによって、与信判定のスコアリングに役立つでしょう。銀行と他業態が持つデータを組み合わせれば、かなり高い与信判定ができるようになるはずです。

次ページフィンテックで、日本の金融機関の未来はどうなるのか?
マーケットの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 就職四季報プラスワン
  • 森口将之の自動車デザイン考
  • ネットで故人の声を聴け
  • 井手隊長のラーメン見聞録
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
中国を知り尽くす異能の外交<br>官 垂秀夫 新中国大使

中国に幅広い人脈を持ち、アグレッシブな仕事ぶりで知られてきた垂秀夫・在中国大使。世界情勢が激動する中で国力差が開く日中関係をどう舵取りするのでしょうか。中国が最も恐れる男が日中関係のリアリズムを語ります。

東洋経済education×ICT