竹中教授「日本のフィンテックがダメな理由」 米国は無審査でポンと5000万円貸してくれる

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山口:フィンテックの問題点がいろいろ整理されてきたと思うのですが、最後にフィンテックに対する「思い」のようなものをお話しいただけますか。

冨田:フィンテックは最先端テクノロジーの世界ではありますが、同時にユーザーと半歩先で寄り添えることが大事になってくるのだと思います。たとえばライフネット生命が登場し、保険の世界でもいよいよインターネット化が進むと思われたのですが、実際に保険ビジネスで大きく伸びたのは、街にある保険の相談窓口だったりしました。

これから銀行、証券会社はフィンテックを取り込もうとする時、AIなどのテクノロジーに突っ走る前に、「ほかにやるべきことがあるのではないか」ということを、考えていく必要があるでしょう。ユーザーが何を求めているのか、それを把握するためにも、半歩先で寄り添う必要があるのだと思います。

ユーザーへの積極的な提案こそが新しい市場を創造する

「日本でフィンテックを盛り上げるには、雇用制度そのものを大きく変える必要がある」。竹中教授の指摘に、参加者の多くが大きくうなずいていた

竹中:エジソンは電球を発明しただけでなく、ニューヨークに会社を作り、電気を売るビジネスを形にしました。つまり発明しただけでなく、それを広く社会に定着させたのが偉大なのです。

フィンテックも、技術の話ばかりが先行していて、まだ社会に定着するまでには至っていません。社会に定着させるためには、ユーザーからニーズが沸き起こるのを待っていてはダメで、供給者側がもっとこういうことが出来るのですよと、世の中にプレゼンテーションしていくことが大事だと思います。

山口:私は一言、もっと皆さん、起業してくださいということです。今は起業するためのコストが大きく下がっていますから、絶好のチャンスです。そういう人が一人でも出てくることに期待したいと思います。

(5月20日の「東洋経済Fintech Day」での「スペシャルセッション」を編集・収録したものです)。

鈴木 雅光 JOYnt 代表、金融ジャーナリスト

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すずき・まさみつ / Masamitsu Suzuki

1989年岡三証券入社後、公社債新聞社に転じ、投信業界を中心に取材。2004年独立。出版プロデュースやコンテンツ制作に関わる。著書に『投資信託の不都合な真実』、『「金利」がわかると経済の動きが読めてくる!』等。

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