ダメな会社ほど社員教育におカネを使わない 30年連続増収の社長が明かす人材活用術

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「利益を社員教育に回す余裕なんてない」という声も聞こえてきそうですが、それは「卵が先か、ニワトリが先か」という問題であり、私は、社員教育を投資と考えています。それも、会社経営の中で考えられ得る、最高の投資です。テニス業界に限ったことではなく、これからの企業の重要な差別化ポイントは「人材」にあります。

お客がテニススクールに通う目的は何かと考えてみたときに、多くの方は「テニス技術の上達」を理由に挙げると思います。確かにそれも大きな理由の1つですが、実は、それ以上に、お客はレッスンの時間を楽しみたいと思っています。

たとえば、定年後に、スクールに通われるお客様は、健康とコミュニケーションを求めて通われています。限られた時間に得られる笑いと感動が、私たちテニススクールの商品なのです。ですから、テニスコーチも、フロントのスタッフも、おもてなしの心を持って「レッスン」という「形の見えないサービス」を提供しなければなりません。

すなわち、テニススクールの商品は「人」であり、「おもてなしの心」です。スタッフの人間性を磨けば、おもてなしの心が養われ、サービスが向上する。そのように考えるからこそ、私は人材教育を何よりも大切にしています。

社員がやらされ感を抱く理由

一般的に「社員教育」という言葉を聞くと、それを受ける社員からすると、どうしても「やらされ感」がつきまといます。日々の業務で忙しいなか、時間を無理やりつくって研修などに参加するわけですから、社員教育を「受けさせられる」といった感覚です。

「なんで、そんなところにおカネを使うんだ」と思う社員すらいます。私自身、社員教育に力を入れはじめたばかりのころ、社員から「わけのわからない研修に通ったところで、会社がよくなるとは思えない。何十万円も、何百万円もする研修に社員を通わせるくらいなら、そのおカネをボーナスにまわしてほしい」と言われたこともあります。

そのような反応になるのは社員が目先の利益にこだわっているからです。一方、社長は社員に理解されなくても、5年先、10年先を見据えて、社員教育におカネをつぎ込むという考え方です。教育とは、それを受けることで、モチベーションの高さなどによって差は出るものの、確実にその人の成長につながるものです。しかも継続して受けることで、成長のスピードは加速します。

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