常見:身の丈飲食って、地元の良いコミュニティになるんですね。チェーン居酒屋などのように組織化された飲食が台頭しているわけですが。私の住んでいる東京都墨田区は、おしゃれカフェもあれば、めちゃくちゃやる気ない飲食店もある。正月三が日に、のれんが出ていた焼き鳥屋に入ったら、おばあちゃんが畳で寝てました。「客が来るとは思わなかった」とか言って、適当に切った肉を焼き始めて。
飯田:落ちるおカネを最大化するか、出ていくおカネを最小化するか。後者のほうが比較的方法論は統一されています。一方でどうやったら稼げるコンテンツを出していけるかはわからない。
ハリボテはもういらない
常見:アイデアいっぱい出せ問題もそうですね。飯田さんの著書の中で面白かったのは、千葉市の熊谷俊人市長の話。海外都市と日本の都市の海を比べて、日本はビーチか否かという話。海外にはふらりとスーツで寄れる港がありますが、日本にはあるのかと。
飯田:ビーチっていうと海水浴、せいぜいサーフィンって思いますけど、単なる風景だっていいわけです。砂浜があって、デッキがひいてあって、オープンエアーのカフェとか居酒屋があって、波の音がするって場所。それができるのは地元だけなんですよ。外からコンサル入ったってすぐに見つけるのは難しい。
いろんな人が文句を言っているところなんですけど、地元の人が気付かないことにコンサルが気付くことはまずない。刺激してくれることはあるかもしれない。「こんなことどうですか?」って。でも最後は地元の人が考えたものじゃないと根付かない。
常見:やっぱり「これが自信作!」って言えるものじゃないと駄目だと思うんですね。私がリクルートで『じゃらん』編集部に異動したばかりのころ「このエリア好きなんです、圧倒的な非日常感があるからなんです」と先輩に言ったら「どうしてそこに君は非日常を感じると思う?」と聞かれました。
「そこは君にとっては非日常だけど、そう感じるのは、そこに地元の人の強い日常があるからだよ」というのがその人の教えでした。各エリアの強い日常が大事で、そうじゃないとハリボテ的な、世界観のないテーマパークになってしまう。
飯田:それこそ地方の中堅都市はハリボテの東京を作り続けてきたわけです。東京っぽいビルとか建てて、東京にあるような店を誘致して……。でもこういうハリボテの街だと、結局の所「より大きい街」「より東京っぽい街」、そして東京そのものにはかなわないわけです。なんなら東京資本の大型ショッピングモールにさえかなわない。ハリボテはもういらない。
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