日本メーカーの牙城、デジカメ没落の危機 スマホが市場を浸食

拡大
縮小

見えない打開策

特にシェアが低いメーカーの先行きは厳しい。業界7位で今期の販売台数650万台を見込むオリンパス。12年度のデジカメ事業は80億円の損失となる見込みで、3期連続の赤字だ。9月に資本提携したソニーと部品の共同調達などの協業を模索するが、「外科内視鏡での連携が優先で、デジカメはその後」(オリンパス関係者)と交渉は停滞している。

200万台の販売を見込むカシオ計算機も、北米や欧州など不採算地域で事業を縮小した。「デジカメ事業からの撤退はない」と同社幹部は話すが、今後については「規模の拡大は求めない。デジカメ技術をタブレットなど新製品開発に展開する」というだけで、デジカメ事業そのものの再建策は見えない。

各社とも成長するスマホとの共存へ試行錯誤している。スマホに無線で画像を転送できる機種を増やしているほか、ニコンは米グーグルの基本ソフト(OS)であるアンドロイドを採用したデジカメを9月に発売した。が、アンドロイドデジカメの売れ行きはよくないようだ。

結局、高級コンデジへのシフト以外に打開策が見いだせない各社。成長途上とはいえ、国内で見るとコンデジ全体の販売台数に占める高級機種の割合は3%程度。金額ベースでも1割と小さく、ニッチにすぎない。

日本企業の寡占市場で、世界で戦える数少ない製品の一つであるデジカメ。その販売台数の8割超を占めるコンデジも、スマホで成長するアップルやサムスン電子に脅かされ、厳しい戦いを強いられそうだ。

(本誌:島 大輔=週刊東洋経済2012年12月8日号

島 大輔 『会社四季報プロ500』編集長

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しま だいすけ / Daisuke Shima

慶応義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程修了。総合電機メーカー、生活実用系出版社に勤務後、2006年に東洋経済新報社に入社。書籍編集部、『週刊東洋経済』編集部、会社四季報オンライン編集部を経て2017年10月から『会社四季報』編集部に所属。2021年4月より『会社四季報プロ500』編集長。

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