藤野英人氏が見たクックパッド「お家騒動」

少数株主としてガバナンスのあり方を問う

同年代の力のある経営者が組んでいる場合、「仲違いに気をつけろ」というルールは、投資家の間では鉄則。兄弟で経営している場合なども、ほとんど決裂している。二人三脚でやっていることが、クックパッドの会社の価値だと信じ込んでいたのですが、実は大きなリスクがあったということですね。

――法律的に考えれば、株主は会社の所有者。佐野氏の意思を重んじるべきことは当然。

その通りで、一義的に考えれば「会社は株主のもの」で、なんの疑いもない。穐田さんを社長から降ろして、執行権限について限定してしまったことも、株主の意向を受けて作られた取締役会で決まったことで、法律の仕組みからは何の問題もありませんよね。

しかし、法律違反があるかどうかというのは、一番小さい枠での話。会社を公益性のある「社会のもの」として見た場合には、違った考え方もありえます。株主はステークホルダーの一つでしかありません。

顧客がいて、従業員がいて、仕入れ先がある。さらには、会社は、国や社会全体につながっている。その中での正義を考えたときに、今回のことははたしてどうだったのか。そうした問題提起になるのが、今回の事例ではないかと思っています。

穐田氏にとって「作品」、佐野氏にとって「子ども」

――穐田氏が推進する多角的な経営戦略が妥当と考えていた?

戦略の中身自体はそれほど重視していませんでした。穐田さんは自分自身が投資家として成功しているし、組織のマネージメントもできる人。穐田さんはクックパッドを自分の作品と割り切ったプロ経営者ですよね。あくまでクックパッドを自分の「作品」として伸ばすという感覚だったのだと思う。

――佐野氏は?

佐野さんは対照的で、クックパッドが自分の子どもであり、自分自身と言ってもいい。かつて、エイチ・アイ・エス創業者の澤田秀雄さんが「会社は俺がカバン一つで始めたのだから、最後はカバン一つになっても構わない」と言っていたことが印象に残っています。

「会社イコール自分」というのは、創業経営者に持ちがちな概念。ダメだったら道連れで死んでもいいと考えている。

――今回はオーナー会社のリスクが顕在化したともいえる。

オーナーは自分の意志と違うことが会社に起きていることに対して、本能的に我慢できないですからね。しかし、創業者の強さもあります。会社は自分の体でもあるし心でもあるし、血が流れている。決断が早いし、身体性があるから経営に対して真剣。不正があったら内々で処理したりすることはなく、きちんと外に出す。東芝のような不祥事は、オーナー経営なら起きにくい。

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