藤野英人氏が見たクックパッド「お家騒動」 少数株主としてガバナンスのあり方を問う
佐野さんが哲人であれば何の問題もないけど、はたしてそういえるのか。騒動前が2200円だったので、700円近く下がっている。ただ、結果的に株価はそこで止まっているので、全員がそれに疑問を持っているということではないのでしょう。
――確かに、そうでなければもっと下がっていてもおかしくありません。
投資家の立場として、今は様子見という段階。もう起きてしまったことですし、佐野さんに対しては「頑張ってください」としか言うことはできない。結果は1年から3年くらいのタームで、注視する必要があるでしょう。
――ひふみ投信も、騒動が発覚する前はクックパッドの株主だった。
佐野さんから株主提案が出て紛争が発覚した瞬間に、株はすべて売却しました。少数株主側は、穐田さんの経営者としての能力を高く評価をしていました。しかし、佐野さんが意思を示してそれを強行したら、持株比率の関係から穐田さんは抵抗できないわけです。
少数株主の選択肢は、株を売ることしかなかった
メインの株主が、他の少数株主とクックパッドの信頼関係を壊す行動をしてきた以上、この先どうなるかは分からないと考えることが普通でしょう。少数株主が、穐田さんの力より佐野さんの力が劣っていることを現状の法的手続の中で証明することはできないわけですから、少数株主は売るしかない。
――2人の対立があったことには気づかなかった?
表面的には佐野さんと穐田さんが二人三脚で仲良くやっているように見えていた。しかし、あの株主提案が出た瞬間に、前からトラブルがあったのだと分かりました。その後に改めて以前のIRとかを見てみると、確かに予兆というものは感じられる。
ウォッチャーとしてクックパッドを観察していたら分かったのでしょう。しかし、ポートフォリオに占める比率が小さかったため、事前に大きな関心を払えなかった。そこまでしなかったのは、投資家の立場としては反省点ともいえます。
――株主が事前に知ろうとする場合は、どうするべきだったのか。
会社訪問をして穐田さんにインタビューし、佐野さんと良好な関係で進めることができているのかを調査することが考えられるでしょう。そうすれば、言葉の切れ端からそういった空気を感じ取れたかもしれない。こういうのは、もはや勘の世界。インサイダーにならない情報の中から、未来を予測する力が大事になります。
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