マイクロソフトには、越えるべき「谷」がある 素晴らしい長期ビジョンを現実化するには?
このデモは、実際にはde:codeで行われたものではない。BUILDで行われたデモをわかりやすくアレンジしたものだ。会話によるアシスタンスサービスを、Windows上で動くさまざまなツールと仲介することで、コンピュータの使い方が変化していく様子を想像できるのではないだろうか。
もちろん、会話のキャンバスとなるのは、スマートフォン上のLINEであっても構わない。このようにマイクロソフトは会話の表層部に入り込むだけでなく、中核部分を構築する道具も用意した。
クラウドプラットフォームの「Windows Azure(アジュール)」には、Bot構築のフレームワーク(枠組み)と開発ルールを提供するとともに、認知的なコンピューティングアプリケーションを開発するためのコグニティブ(認知的)・コンビューティング向けAPIを提供する。女子高生型人工知能LINE/Twitterアカウント「りんな」をはじめ、自然言語による会話にマイクロソフトは大きな投資をしてきた。
乗り越えるべき「谷」とは?
長期的ビジョンにおいては、マイクロソフトは驚きを提供したといえる。しかし、もっと身近なところに、越えなければならない「谷」があるように思う。
それは、プラットフォームであるOSのWindows 10への移行促進と、すべてのWindowsで動くアプリケーションのUWP(Universal Windows Platform)への移行だ。いくら多くのWindowsユーザーがいるとはいえ、プラットフォームが古いままでは、せっかくのConversation as a Platformというコンセプトも霞んでしまう。
マイクロソフトは「Bridge」という技術で、マルチOS環境に対応しようと必死だった。Androidアプリをそのまま動かす計画は頓挫したが、iOSアプリをそのままインポートしてUWPアプリを作る「Bridge for iOS」は、Instagramなどいくつかの成功例を生み出しつつある。また、今回は人気テキストエディタの「秀丸」を、デスクトップアプリケーションコンバータ(Bridge for PCと言われていたもの)を用いて変換。UWPアプリとして動作されるデモが披露された。
加えて、「.NET」アプリをそのままAndroidやiOSアプリに変換するザマリンというクロス開発(実行する機器とは異なる環境で開発を行うこと)環境を無償提供することで、開発者にとってもっともつき合いやすいパートナーだと伝えていたが、現状をひっくり返せるほどのインパクトは与えられていないように見える。
では、この夏に提供されるWindows 10 Anniversary Editionで、開発者の心、ユーザーの心を捕まえることはできるのだろうか。米本国の大規模開発者会議をほぼそのまま日本に持ってきたところにマイクロソフトの執念を感じたが、すでに「個人にとってもっとも身近なコンピュータ」は、パソコンではなくスマートフォンだ。
コンシューマPC市場の縮小が著しい日本で存在感を出すには、スマートフォン分野での新たな一手が必要になるだろう。
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