紳士服AOKIが過去最大の改装投資を行う理由 「ポートフォリオ経営」が踊り場に

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ブライダルや複合カフェに手を伸ばし、ポートフォリオ経営で一時はうまくいったが・・・

ただAOKIも手をこまぬいているわけではない。状況打破をにらみ、今2017年3月期は過去最大の改装投資に踏み切る方針だ。紳士服AOKIの改装費用増などが重く、3期連続営業減益となる158億円(前期比11.2%減)を見込みむなど、あえて“攻めの減益”という賭けに打って出る。

本丸の「AOKI」は、全570店のうち2割にあたる120店を、上期に一斉改装する。前期も117店改装したが、什器や看板などの小幅改装にとどまり、その投資規模も小さかった。一方、今期は前期の6倍となる32億円あまりを改装費に投じる予定で、床や壁、天井といった内外装を大規模改装するなど、前期とはケタ違いである。

大規模改装では、主に成長余地の高いフォーマルやレディス、ジャケットなどのコーナーを充実させる。フォーマルコーナーでは絨毯やシャンデリアなど装飾にもこだわる。また2階建て店舗では、1階に紳士スーツやシャツの売り場を設け、2階にレディスやフォーマルを設定。エレベータも導入、2階への立ち寄りを増やす。さらに、これまで手薄だった「大きいサイズ」もコーナー展開し、新たな需要を取り込む方針だ。こうした大規模改装は、来期、再来期も続ける。今後3年で最近開店したばかりの約200店を除く、約370店が改装対象になるとみられる。

改装セールを増やし客数増を優先

また、前期抑え過ぎた反省から、改装セールや販促も例年通りに再び増やす方針だ。その分、粗利率は悪化するが、既存店の客数をプラスにすることを優先。もう一度攻めの姿勢に転じる狙いがある。足元では、4月の既存店売上高が前期比7.6%増と、回復基調。AOKIでは「セールをしっかりやれば上がる」(幹部)と手応えを感じている。

同業他社も非スーツ事業を拡大し始めている。それでも多角化を進めるには何より、柱のスーツがしっかりと安定していることが重要。ライバルからは「ポートフォリオ経営は聞こえがいいが、いろいろと経営資源を分散し過ぎるとよくない」とする声も挙がっている。そうした声を払拭できるか。AOKIにとって正念場だ。

                        (撮影:今井康一)

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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