グーグル「声で家中を操作」の巨大すぎる野望 部屋全体が音声認識デバイスになる!

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グーグル・ホームは2016年後半に登場の予定で、価格や発売日は明らかにされていない。価格次第という面もあるため、今の段階でどのような使われ方をするか、予測するのは困難だ。

そのことを前提としてあえて可能性について言及したい。それは「コンピュータの使い方そのものを変えてしまうかもしれない」ということだ。コンピュータが一般の人々に広く行き渡るようになってから、そのスタンダードな姿をいくつか変えている。デスクの上で据え置き型で使うコンピュータから、ノートパソコンが主流になった。スマートフォンをコンピュータととらえれば、机の上、膝の上で使ってきたコンピュータは、手の上へと落ち着いた。

これらのデバイスの共通点は、いずれも、ディスプレーを目で見て操作することだった。ディスプレーを用いることで、さまざまな情報を効率的に表示することができ、入力している内容の確認にも便利だからだ。現在ではパソコンもタブレットも、スマートフォンのようにディスプレーに直接触れて操作するようになった。

コンピュータにわがままを言える時代に

ディスプレーのないコンピュータだ(著者撮影)

しかしグーグル・ホームは、簡単な有機ELのディスプレーを備える以外は、声での操作へと割り切っている。マルチタスクによって高機能であることをアピールしてきた既存のコンピュータに対し、対話型のインターフェースはひとつの機能に集中させることになる。

ディスプレーのないコンピュータは、既存のコンピュータに慣れた人にとっては、とても使いにくいだろう。コンピュータの動作をディスプレーを通じて俯瞰的に見られなくなるし、なにより、「今どういう状態なのか」を目で確認してから使い始めることができない。実際には、音声アシスタントは、いつでも待ち受けているため、いつ話し始めてもよいのだが、このことに慣れるにはハードルがありそうだ。

今までわれわれが、いかにコンピュータのご機嫌をとりながら接してきたかがわかる例だ。人々がコンピュータに対して、もっとわがままを言えるようになる、そんな気づきをもたらしてくれる可能性がありそうだ。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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