”自分が最後の砦”と思いなさい

正攻法も、参考事例もない世界で働くということ

そうしていつしか自分自身も、過去の常識や慣習にとらわれた考え方をするようになるのだ。それに対してベンチャーでは、他社はやっていないけれども、われわれが先陣を切ってやってみようという意思決定がされやすい。むしろ、今までにない提案が歓迎される。

もう1つ例を挙げよう。当時DeNAには「ポケットアフィリエイト」という広告ネットワークがあり、モバイルの分野では業界トップクラスのサービスだったため、パソコン版でもナンバーワンを取りにいこうと、今から6年ほど前に私がプロジェクトマネジャーを任された仕事だ。

現在の社長の守安功から事前に「こうすればきっとうまくいく」という説明を受けてプロジェクトをスタートした私は、その方法を信じ、自分の出せる力の100パーセント以上を注ぎ取り組んだ。システムを作り、営業メンバーを採用し、3カ月間、寝る間も惜しんで準備した。

ところが、いざスタートしてみると思ったほどうまくいかない。そしてサービス開始から2週間後、守安に呼び出された。「もうやめようか。初動でうまくいかないということは駄目なんだよ」。転職して2年目、新規のサービスを任され、死に物狂いで準備したのに、2週間で撤退とは。これがベンチャーのスピード感である。

そのとき私は、あることに気づいた。ベンチャーに飛び込んで暴れ回ってやるんだ、というつもりで転職してきたのに、いつの間にか上司に言われたとおりのことをやっている。実はそのプロジェクトを2週間やってみて、自分でも「別のやり方のほうがいいのでは」と思うことがあったのだ。

そこで、その別の方法を提案し「3カ月後に売り上げ目標を達成できなければ責任を取って会社を辞めるのでやらせてほしい」というメールを守安や当時の社長の南場智子に送った。

メールは、一緒に働いているメンバーにもCCで入れておいた。数時間後、守安から「了解。」の3文字が返ってきた。返事の早さもさることながら、転職2年目の自分のプランを即決で信じ、任せてくれたことがうれしかった。

この一件はメンバーにもいい刺激になった。周りの協力もあり、結局、3カ月後の目標を2カ月で達成。撤退寸前だったサービスがグーッと立ち上がっていった。ベンチャーには現場を信じてやらせてくれる土壌があることを実感した出来事だった。

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