JALの公的再生は失敗だ 【短期集中連載】冨山和彦氏に聞く(最終回)
確かに弱い立場である現場の働き手は会社倒産で困る。でも、彼らは潰れなくてもリストラされてしまう。彼らをどう守るかという問題は、社会政策の問題であって経済政策の問題ではない。経済運営では潰れることは善なんです。
会社が潰れるのは、今ある会社の形なり、事業の形に対して競争市場が退場を命じているから。あるいはリシャッフルを命じている。資源を別のところに売りなさいよと命じている。赤字で債務超過ということは経済的には社会的存在がないということ。
新陳代謝の促進こそが大事
そのリシャッフルをどれだけ少ない社会コストでやるかという問題であって、潰れること自体に何ら問題はない。そのときに外資が買ったから技術流出だとか言う人も多いが、日本国の産業の基盤競争力にかかわるようなすばらしい技術を持った会社がなぜ潰れるのか。それよりは、新陳代謝を流していくのがよほど大事です。個別企業を救うことになんら美しさはない。
本来、潰れなきゃいけないような会社がゾンビな状態でいつまでも延命していて、そこに有用な人・モノ・ノウハウ、情報が閉じこめられたままじわじわ腐っていくことの方がよほど問題なんです。そういう会社はさっさと整理をして、あるものはやめる、必要なものは別の会社にひきとってもらう。だから、産業再生機構では原則として再上場という選択肢を取らなかった。
会社が潰れること自体は、企業社会という生態系における健康的な新陳代謝です。経済はまさにエコシステム、エコノミーだから。生態系ですべての生き物が死ななかったら大変なことになります。
私の世界観では企業の死はなんら悪いことではない。その中で別の会社がテイクオフするチャンスがあればしていけばいい。そこを変に政府が介入して妨げることをやってはいけない。