JALの公的再生は失敗だ 【短期集中連載】冨山和彦氏に聞く(最終回)

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JALの再生について、競争歪曲の問題を放置したこと、不透明な増資をやったこと、それらによって政治問題になったということに関して、本件は公的再生としては失敗案件です。公的再生というのは、政治家がそこに口を挟むような世界を作ってはいけない。それをやった瞬間から公的再生は利権の巣になる。

上場益で儲かったからいいじゃないかという主張もあるが、会社更生法を使う段階で、日本政策投資銀行など公的金融機関も相当な引当てをしている。税金など国トータルで考えれば損失を取り返せていないはずです もちろん、二次破綻のリスクもあった中で追加負担を回避できたことは評価できる。

100満点では、追加負担を出さなかったということで50点だけど、公的再生の透明性や公平性で国民の疑義を生んだとすれば、残りの50点は0点です。公的再生としてはむしろ汚点を残した。

ただし、JALに対する批判は間違っている。責任があるのは、当時の企業再生支援機構の責任者です。

企業倒産は悪か

マクロ経済的な観点からすると、会社が潰れることはいいことで、何ら悪いことではない。日本の社会では、「企業倒産は悪である」とされているが、人間が死ぬのと同じように企業も死んだほうがいい。新陳代謝があるからシリコンバレーは隆盛を続けている。

日本長期信用銀行が潰れたことで、むしろ長銀出身にいた人が社外に出て活躍している。何か悪いことがありますか?

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