1年後、決算短信からBSとPLが消える? 中身より速さを優先、ディスクローズ後退か
だが、2017年3月期の決算短信から、つまり1年後からは、サマリー情報は開示義務がなくなり、経営成績・財政状態・今後の見通しの概況、財務3表とともに、”要請”対象になる。
そのうえ、財務3表については、「投資者の投資判断を誤らせるおそれがない場合」には、要請対象からもはずれる。
上場会社は、金融商品取引法で提出が義務付けられている四半期報告書と有価証券報告書において、財務3表の開示義務を負っている。つまり、短信に添付せずに済んだところで、四半期報告書もしくは有価証券報告書の提出期限には開示しなければならないことに違いはない。が、問題は、その時期だ。
四半期短信は四半期報告書の開示までの期間が短いので影響は軽微だが、本決算では総会招集通知に添付される事業報告書の開示まで、最大40日前後の開きが出る。この間、サマリー情報の根拠を示す重要情報たる、財務3表が見られなくなる可能性があるのだ。
決算発表の義務は1999年からだった
株主と上場会社の対話を謳いながら、なぜ開示の大幅な後退につながる結論が出されたのか。対話には数字こそ必要ではないのか。
決算短信は、もともと1960年代後半に記者クラブである兜倶楽部の要請で誕生しており、誕生当時は過去2期分の業績と今期の業績予想数値を記載しただけのシンプルなものだった。だが、徐々に財務諸表や業績概況など要望が膨らみ、1980年に取引所に管理が移管されて以降は、投資家の要望に応じて、取引所が要請項目を順次拡大してきた。
上場会社に決算発表を行うことが義務付けられたのは1999年。それ以前は決算発表をすること自体が義務ではなく、取引所からの要請だった。ただ、1999年以降も決算発表を行うことは義務化されたものの、様式については定型での義務化はされず、サマリー情報を使って決算発表をすることが義務づけられたのは2011年になってから。もっとも、それ以前も企業は長年、取引所からの要請に応じて財務諸表付きの短信を開示してきた。企業が要請を実質的に義務と捉えたからだ。
このため、財務諸表付きの短信を全上場会社が当たり前に開示するようになって、かれこれ40年にもなるというのに、上場会社の対応次第では、決算情報を有価証券報告書のみに頼っていた40年以上前に逆行しかねない。
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