1年後、決算短信からBSとPLが消える? 中身より速さを優先、ディスクローズ後退か

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取引所からの要請を無視して、サマリー情報の開示までやめる企業は、おそらくあるまい。だが、財務3表は要請すらされなくなっても、従来通り、全上場会社が短信への添付を続けるのだろうか。

2015年11月のWG発足当時から、今に至るまで、当該WGに関する報道は少なく、かつ、扱いも株主総会関連のものが主流だ。短信から財務3表が消える可能性については、2月に日本経済新聞が電子版で報じただけ。だからか、当事者である上場会社の開示担当者にも、プロの投資家にも、ほとんど知られていない。

現段階では、投資者の判断を誤らせない基準が不明確なこともあり、大半の上場会社は従来通りの形式で出し続けるのでは、という楽観論も証券界からは聞こえてくる。現状、約3600社ある上場会社のうち、アナリストカバーが付いている会社は約700社。少なくともアナリストカバーが付いている上場会社が、財務3表の開示を止めるということはありえない、というのがアナリストの肌感覚であり、自分自身の業務が影響を受ける可能性はほとんどない、と考えているからだ。

四半期開示が短期化を助長した

経団連所属の大企業は、情報開示には比較的前向きな方だが…(撮影:梅谷秀司)

元々、四半期短信と四半期報告書の統合を主張している経団連も、最終的には四半期決算の開示義務廃止を目標としている。ただ、それは各社が自由な形式で開示するためであって、「開示しない」ためではない。

経団連所属の上場会社の多くは、独自の決算説明資料に加えて、形式が決まった短信も作成しているという感覚だ。だからこそ、任意になったら出さないとはありえない、という感覚でもある。

「四半期開示がショートターミズム(短期的業績の重視)を助長しているから、業績開示は昔のように半年に1回、もしくは1年に1度で十分」と考える経営幹部が、財界には一定割合で存在することも事実だが、決して主流ではない。

ただし、残念ながら、情報開示に消極的、もしくは後ろ向きな上場会社は一定程度存在する。むしろ数の上では主流と言っていいかもしれない。

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