バラマキとえこひいき「悪さ加減の選択」 子ども手当てだけじゃない、減税だってバラマキだ!

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有権者と政治を結ぶ「バラマキ」

えこひいきが社会的にも政治的にも難しくなる中では、たとえ批判されても、バラマキは有権者と政治を結ぶ数少ない縁(よすが)となる。

たとえば、農業協同組合も農村部を中心とした強力な「集団」のひとつである

子ども手当なら、子どもがいるという特性を持つ人々へのバラマキとイメージしやすい。だが、実際におカネをバラマくわけではない「減税」も、実質的には高所得層へのバラマキだ。

いずれにしても、政権を握る政治家たちは、バラマキによって有権者の期待に応え、それを継続的な支持に結び付けることで、支持基盤を作ろうとする。

その作業は、政治不信の深刻な日本では重要な意味を持つ。有権者が政治に対して期待を持ち、それが実現されるというサイクルを地道に積み重ねることが、政治への信頼回復につながるからだ。

もちろん、政権に入っていない野党が、野党に期待する有権者のために、政権によるバラマキを批判することはありうる。政権政党が有権者の期待を実現できないことが、野党の利益になるからだ。

しかし、バラマキが一般に認められないとすれば、政治は立ち往生し、政治不信が解消されることもない。

「えこひいき」の時代に回帰しないのであれば、私たち有権者は、「バラマキ」の政治との付き合い方を学習する必要があるだろう。

 

【初出:2012.11.3「週刊東洋経済(アップルはいつまで特別か)」

 

(担当者通信欄)

 支持の基盤となる「集団」への「えこひいき」は与党(≒自民党)の戦略、ある属性を持った「個人」への「バラマキ」は野党の戦略、と従来考えられていた。ところが、財政資源の制約の厳しい現在では、この与党の戦略はほとんど不可能に。

それなら、有権者全員が幸せになれるわけではなくとも、限られた資源をどう配分することが望ましいのか、有権者の私たち一人ひとりが「バラマキ」と の付き合い方を考えるべし!ということですね。自分がバラマキの対象になるかどうかということは、必ずしも第一の判断基準にはならないのかもしれません。

さて、砂原庸介先生の「政治は嫌いと言う前に」連載第2回は2012年11月26日(月)発売の「週刊東洋経済(特集は、新流通モンスターアマゾン)」に掲載です!
注目される「第三極」とは何なのか、彼らの抱える問題は何なのか?
衆議院解散を受けての緊急執筆です。(原稿あらかた書き終えていただいてから解散決定。急遽差し替えとなりました。)

 

 

売れ行き好調、 砂原先生の最新著作! 『大阪―大都市は国家を超えるか』(中公新書) 橋下改革の最前線にある大阪市立大学から、地方自治の専門家として国家と対峙する大都市「大阪」の来歴と今後を議論します!

 

 

 

砂原 庸介 政治学者

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すなはら ようすけ / Yosuke Sunahara

1978年7月生まれ。2001年東京大学教養学部卒業、東京大学大学院 総合文化研究科 国際社会科学専攻にて2003年修士課程終了、2006年博士後期課程単位取得退学。2009年同大学院より、博士(学術)。財務省・財務総合政策研究所の研究員、大阪市立大学などを経て、2013年より大阪大学 准教授。専攻は行政学、地方自治。地方政府、政党の専門家として、社会科学の立場から学術研究に注力する。傍ら、在阪の政治学者として、地方分権や大阪の地方政治について、一般への発信にも取り組む。著書に、『大阪―大都市は国家を超えるか(中公新書)』(中央公論新社、2012年)、『地方政府の民主主義―財政資源の制約と地方政府の政策選択』(有斐閣、2011年。2012年日本公共政策学会 日本公共政策学会賞〔奨励賞〕受賞)、共著に『「政治主導」の教訓:政権交代は何をもたらしたのか』(勁草書房、2012年)、『変貌する日本政治―90年代以後「変革の時代」を読みとく』(勁草書房、2009年)など。
⇒【Webサイト】【ブログ sunaharayの日記】【Twitter(@sunaharay)

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