一風堂ラーメンが韓国から突然撤退した理由 人気のラーメン店で何が起きたのか?

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そして、本格的なラーメンというのは韓国の人にとって親しみがなかったこと。わざわざ足を運んで食べるもので日常的なものではなかった点です。そして、外食産業は、企業が運営するにはレイバーコストが高くついて、経費はかさんでも利益が出なければ、苦しいですよね」

加えて、食文化の変化として韓国で年々、高まっている健康志向の流れを挙げた。

「脂っこいものを避ける傾向にありますから、豚骨スープに負担を感じたこともあったでしょう。それに、数年前からの韓国料理を世界に広めるという政策とも相まって野菜がふんだんに使われる韓国料理が見直されていて、最近では店内のインテリアも瀟洒(しょうしゃ)で、スタッフのサービスも行き届いた韓国料理店が続々登場していて人気になっています」

旅と日常では異なる外食の位置づけ

韓国の外食産業の本格的な幕開けは1992年にファミリーレストランのTGIフライデーズがオープンしてからで、いずれも海外留学から帰国した財閥の2世、3世がビジネスにかかわるようになってからだと言われている。海外で見つけた味を韓国に持ち込んだというわけだ。一風堂もAKグループ2世の蔡東錫(チェ・ドンソク)副会長がその味のファンだったという。

韓国では1990年代にフュージョン料理が流行し、2000年代に入るとその国に特化したお国ならではの料理が人気となり、「ノバタヤキ」と呼ばれていた居酒屋はイジャカヤと呼ばれ、より日本に近い味が好まれるようになった。健康志向は「ウェルビーイング」というキーワードで浮上してからその志向は年々高まっていて、最近では野菜満載の韓国料理のビュッフェが人気となっている。

韓国と日本は飛行機で約2時間という近い距離で往来が頻繁なことも外食産業とは無関係ではないようだ。日本に旅行に行く韓国人観光客は今や年間およそ400万人(2015年、日本政府観光局)。日本への旅の目的を尋ねるとまず「食」を挙げる人は多い。しかし、旅の中での特別な「本場の味」と日常の中での「外食」では感じ方も味わい方も異なる。

本場の味や店のたたずまいなどをよく知る人が増えたぶん、地元での外食として本場の味をどうローカライズさせていくか、またどう調和させていくのか。外食を展開する企業はいま一度、再考する必要がありそうだ。

菅野 朋子 ノンフィクションライター

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かんの ともこ / Tomoko Kanno

1963年生まれ。中央大学卒業。出版社勤務、『週刊文春』の記者を経て、現在フリー。ソウル在住。主な著書に『好きになってはいけない国』(文藝春秋)、『韓国窃盗ビジネスを追え』(新潮社)がある。

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