一風堂ラーメンが韓国から突然撤退した理由 人気のラーメン店で何が起きたのか?
どうして閉店してしまったのか。一風堂の広報は、「閉店はライセンス契約満了に伴うもの」と説明する。「あくまでもAKグループとの契約終了に伴うビジネス判断からです。今回は離れましたが、AKグループとは今でも友好な関係を保っています」とのこと。AKグループ側からも似たような説明が返ってきた。
しかし、外食業界に詳しい韓国の記者はこう解説する。「外国の有名ブランド店と契約した際、その味を保つことは大前提ですが、ほかにもそのブランド店らしさを保つために店舗デザインからインテリア、スタッフの教育まで相当な経費がかかります。一風堂も人気はありましたが、(AKグループ側にとって)ライセンス料がやはり相当負担になったと言われています。その分利益が出ていたかというとそうではなかったようで、ブランド価格を押してまでの経営には至らなかったというのが大筋の見方です」
ソウルの店には魂が感じられなかった
これはなにも一風堂だけではない。韓国で展開する日本の某チェーン店も、スタッフ教育など人件費のレイバーコストなどがかさんでいるものの、それに見合った利益は上がらず、店舗数を減らしたりしている。「いつ畳んでもおかしくない」とささやかれている。
九州に行けば必ず一風堂のラーメンを食べ、時間ができれば日本に行き、日本の味を探索する日本通として、また、韓国随一のイタリアンシェフとしてその名を知られる朴チャンイル氏は、一風堂の閉店は意外ではなかったと話す。
「私は一風堂のラーメンが好きで福岡には15年くらい前から通っていますが、ソウルの店には日本の一風堂にある匠の精神、アニマ=魂が感じられなかった。味はね、悪くなかったんですよ。でも、店のインテリアは凝っていて洗練されているんだけれども、一風堂らしさがなくて、そのせいか味も違うように感じられてね。なんとなく寂しかったですよ。残念です」
朴シェフの言葉には思い当たることがあった。韓国に進出している日本の某チェーン店に行った時のことだ。味は日本で食べた時と違いはなくおいしかったが、スタッフの動きや乱れたままの椅子やテーブルなどを目にしてひどく落胆して以来、そこには足が向かない。そのブランドの食を楽しむというのは味と店が醸し出す雰囲気などが「調和」してはじめて「ブランド」になるものなのだろう。
韓国外食産業研究所の慎奉撥(シン・ボンギュ)所長は一風堂の韓国からの撤収をこう分析する。
「一風堂の撤退はさまざまな見方ができますが、まず挙げられるのが価格でしょう。韓国人が好きなジャジャンミョン(ジャージャー麺)やカルグクス(うどん)の価格帯は4000~7000ウォンですが、一風堂のラーメンは8000ウォンと高めで、特にラーメン好きの若い人にとっては価格に負担があった。
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