熊本の被災飲食店、進む復興と直面する課題 驚異的速さで営業再開した店舗も

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熊本城の堀の東側にある熊本大神宮も全壊。大地震の爪痕は深い

上益城郡嘉島町で被災したラーメン店『陽向(ひなた)』。地震ですべての器が割れてしまったが、ここにもラーメン器が届いた。佐賀のラーメン店『いちげん。』の呼びかけで「日本ラーメン協会」を通じて集められたものだ。「途方に暮れていたので、本当に嬉しいです。日本屈指の有名店の器もたくさんあり、さらに精進しようと誓いました」と内田哲史さん。『陽向』は店舗建物こそ「緑の紙」判定と無事だったが、敷地に最大約30㎝の段差と亀裂が生じてしまい、補修に時間がかかったそうだ。

営業時間・営業形態を拡張するお店も

『とさか』の木村恵一さんは「ピンチをチャンスに」と自分に言い聞かせる

熊本の店舗の人に話を伺って共通して感じることは、彼らの「強さ」だ。彼らから出る言葉は、おしなべて「がんばるけん!」。そんな意気込みを今後に活かそうとしているのが、4月23日に営業再開した、『焼鳥 とさか』(熊本市中央区上通町)。「熊本和数奇司館」の1階にあり、自然派ワインと日本酒、熊本の地鶏である天草大王を用いたやきとりが人気の店舗だ。

ご主人の木村恵一さんはいう。「幸いにして店舗被害は無いに等しく、自宅も無事だったので、お風呂、トイレ、食事、宿泊場所として解放していました」。そして「ご来店頂いたお客様の笑顔と、ありがとうの言葉を原動力に、また、神様からの宿題ととらえて無い知恵を絞って行きます!」と語る。さらに今後は、人員雇用の機会でもあるととらえ、スタッフ増員が実現すれば営業時間・営業形態共に拡張予定だそう。

被害甚大な阿蘇で炊き出しや復興の手伝いを重ねる『いまきん食堂』

さらに、阿蘇神社の楼門などが全壊、土砂災害などに見舞われた阿蘇地方。その内牧温泉で創業100年を誇り、連日2時間待ちも珍しくなかった『いまきん食堂』も4月28日より再開。4代目の今村聡さんによると店舗は、店の中に地面が隆起しドアが開かない状況。そのため、再開までは炊き出しや支援物資を届けたり、ボランティアの方々に食堂を宿泊所として開放したりして、復興の手伝いをしていたそう。

「阿蘇外輪山色々な所が遊び崩れ 寂しいばかりですが、頑張ってひとつひとつ前へ進んでいきます。これからも阿蘇名物の“あか牛”を食べていただき 阿蘇の経済、農業、観光のお手伝いができれば」。今村さんは語る。自らも被災し、住居が全壊となったスタッフも多い中、より大変な周囲の人々のために尽力していた。

「全国の皆さんは自粛なんかしないで、日常の生活を送って欲しい。普通に食事に行ったり、買い物をしたりして、日本経済を支えて欲しい。大丈夫、私たちは必ず復興するから」。熊本の被災者は共通してこのように言う。現実には店舗を再開しても売り上げの確保などさまざまな問題点は山積みだが、全国や海外からも支援の輪が広がっている。すでに営業再開した飲食店の完全な復興とまだ休業している飲食店の早期再開を願うばかりだ。

はんつ遠藤 フードジャーナリスト

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はんつえんどう / Hantsu Endo

1966年東京都葛飾区生まれ。東京在住。早稲田大学教育学部卒業。海外旅行雑誌のライターを経て、テレビや雑誌、書籍などでの飲食店紹介や、飲食店プロデュースなどを行うフードジャーナリストに。ライターとして執筆、カメラマンとして撮影の両方を1人でこなし、取材軒数は8000軒を超える。『週刊大衆』「JAL(Web)」などに連載中。また近年は料理研究家としてTVラジオ雑 誌などで創作レシピを紹介している。著書は『はんつ遠藤のうどんマップ東京・神奈川・埼玉・千葉』『おうちラーメン かんたんレシピ30』『おうち丼ぶり かんたんレシピ30』『全国ご当地やきとり紀行』(以上、幹書房)など。

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