なぜ「ヤンキーの虎」は地方を支配できるのか 「伝統的エリート」では、地方を建て直せない
ただ、こうした一部の大きな専門店チェーンを除けば、大半の「虎たち」が地方でやっている事業は、どこでも大体似通っています。ざっと挙げると、コンビニチェーンや外食のフランチャイジー、土建業、パチンコ屋、リフォーム業、保険の代理店、介護施設の運営、携帯電話の販売代理店、ガソリンスタンド、中古車の販売、水の販売などです。これらを組み合わせて事業を行っているのが大きな特徴です。
いまあげた業種を見ればわかる通り、ビジネスの新規性は全くといっていいほどありません。それなのに、上手に商売を行い、衰退している地方で勢力を拡大しています。複数のチェーンの「マルチフランチャイジー」として地方を支える虎もいれば、成功モデルをパッケージ化して全国展開していくところもあります。決してバカにできる存在ではないのです。
「リスクをとらない人たちが支配する」のが日本企業
では、なぜ「虎」は一見新規性のないサービスで、上手に儲けられるのでしょうか。それはリスクを取っているからです。ここがとても重要です。日本では多くの場合、「リスクを取らないことが良いこと」だと考えられています。特にエリートには「リスクを取るのは、小さい奴がやることだ」という間違った考えを持っている人が多いのです。
実は、私のいる金融業界でも、エリート層はファンドマネジャーになどなりません。資産運用という仕事には、失敗するリスクがあるからです。
面白いのはファンドマネジャーを3流の人間がやると大失敗するので、大半の場合、日本では少しだけ負ける1.5流の人間がやっていることが多い。では、本当の日本流のエリートはどこにいるかというと、大きな損が出ない部署である人事・企画部門にいるわけです。
これは世界では非常に珍しいことです。海外では、ファンドマネジャーのようなリスクを取って高いリターンを挙げる仕事は超一流か、一流がやります。成功したら何百億円ももらえるけれど、失敗したらクビ。そういう世界で切磋琢磨しています。これは金融業界に限りません。日本では営業や開発でも、リスクのある業務に最優秀層が行くことは今でも皆無に等しいのです。
こうした事情は地方も同じで、地元の伝統的エリートが行くのは地銀や役所、それから地場新聞社や電力会社などです。彼らは地元で安定した生活を送りたいから、そういう固い仕事につき、リスクを取りたがりません。
その点、「ヤンキーの虎」は逆です。彼らは自分たちのおカネで、リスクをとって業務を行っている。いわば、「伝統的なエリート」ができないことをやっているから勝てるのです。
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