日銀の新・金融緩和、導入されたらどうなる? 貸出支援基金のマイナス金利化の影響を試算

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こうなると、銀行業界への打撃は一段と拡大する。短プラは、中小企業向け融資や変動型住宅ローンの基準金利となっていることが多い。その金利低下は、特に地方銀行の収益に大きな打撃を与える。海外へ展開できる大手銀行と違って、地方銀行は国内の中小企業向け融資や住宅ローンが主力だからだ。ただでさえ、マイナス金利政策導入で長期国債金利が低下し、地方銀行の国債運用益は縮小傾向にある。さらに、これまで7年強に渡って据え置きを死守してきた短プラが低下するなら、経営基盤の弱い地域金融機関にとっては命取りにもなりかねない。

日銀は異次元緩和のフレームワーク見直しを

日銀が新たな追加緩和に踏み切れば、地方経済を疲弊させることにもなりかねない(撮影:今井康一)

日銀の極端な異次元緩和のそもそもの問題は、それが為替や株式など資産価格にのみ刺激を与え、本来の目標である物価上昇率2%達成や実体経済の改善につながっていないことだ。今回、日銀が銀行経営に配慮しながらマイナス金利政策を深掘りする策として浮上してきたのが、貸出支援基金のマイナス金利化。だが、この策も、銀行経営に悪影響を与えることが明確になり、実体経済の改善にも結びつかなければ、日銀への批判は一段と強まるだろう。さらに緩和策の強化が、地域金融機関や地方経済の疲弊に直結し始めるなら、これまでは日銀に好意的だった政治家側からの批判が始まるかもしれない。

日銀は、これ以上の金利低下を追求しても益より害が大きい――。そうした認識が広がる中、過大な目標である物価上昇率2%という目標設定のあり方を含め、異次元緩和策のフレームワークそのものの見直しを日銀は迫られている。その際は、政府の実質経済成長率2%という過大な目標もセットで見直す必要がある。

野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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