ペッパーの父が挑む、「癒やしロボ」の進化形 「手を温かく」おばあさんの一言がきっかけに
開発中のロボットのコンセプトは「人の心を癒やしたり、パフォーマンスを上げることができるロボット」。人型ではなく、ソニーのAibo(アイボ)のようなペットロボットでもない。人との会話はおろか、何かを持ったり、物を運ぶこともできないという。工場のラインで働くロボットのような機能や利便性といった面からはかけ離れた存在だ。
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だが、人と向き合うことで心を癒やし、能力を回復させることができるような存在を目指している。言語ではない分野において人とのコミュニケーションを目指す点で、世界でも珍しい、ロボットの新種と言えるだろう。
「飽きられたくない」との理由から開発中のロボットは非公開としている。可能な範囲で表現すると、試作機は何か新しい生き物を思わせる形状で、ペッパーよりは小さい「中型犬サイズ」といったところか。センサーやカメラなど、機能面を最優先にしたデザインだが、「女性から驚くほど圧倒的な支持を得ている」(林氏)という。
GROOVE Xは個人投資家や運用会社のスパークス・グループ、ベンチャーキャピタルのグローバルカタリストパートナーズジャパンによる出資で数億円を調達済み。最も大きな割合を占めるのは個人投資家だという。今後は開発で数十億円、量産化を含め総額100億円を投じる。必要資金は投資家などからリスクマネーとして調達する考えだ。本格的なサービス開始は2019年を予定している。
言語以外の何が、人々を惹きつけたのか?
新しいロボットの構想は、ペッパーにおける体験から生まれたものだ。ペッパーはさまざまな施設を訪問してきたが、老人ホームでも非常に人気だった。お年寄りは飽きることなくペッパーをかわいがり、一日中コミュニケーションを楽しんでいた。よくよく様子をうかがうと、会話がすべて成立しているわけでもない。何がそこまで惹きつけるのか、すぐにはわからなかった。
あるとき、ペッパーの改良点を聞いてみると、おばあさんから予想もしない答えが返ってきた。「手を温かくしてほしい」。長年、エンジニアとしてものづくりにかかわってきた林氏にとって、衝撃の一言だった。
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作り手の視点からすれば、ロボットの手は物を持てればそれでいい。だが、人と交流する場合、情報のやりとりだけでなく「手が温かい」といったところに、人を惹きつける何か重要な要素が隠されている。そんなことに気づかされたのだった。
海外でも、遠巻きにペッパーを見ていた外国人が一度近づくと、抱きしめたりキスをするといった反応がみられた。こちらも会話などの情報ではなく、人間が無意識の領域で何かを感じ取ったためと考えられた。こうした経験を重ねる中で、ペッパーとは異なる表現方法のロボットも求められているのではないか。そんな思いは徐々に広がっていった。
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