勝者も敗者もいない「北海道5区補選」の衝撃 なぜ池田候補は追い上げることができたのか

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2014年の衆院選で町村氏が得たのは13万1394票。民主党と共産党の獲得票の合計は12万6498票だ。投票率で調整すると、今回の補選で和田氏は2014年の町村氏に比べて6334票増やし、池田氏は2014年の民主党と共産党の合計票数から1266票減らしたことになる。

和田氏の票を増やした要因となったのが「新党大地の票」だ。新党大地は第5区で最大3万5000票持つと自認している。これまで新党大地が北海道全域で獲得した最大票数を2004年の参院選に無所属で出馬した鈴木宗男氏が獲得した48万5382票、現在の新党大地の票は21万票とすれば、第5区での新党大地の票数は約1万5000票と推定できる。この数字は和田氏と池田氏の得票差を上回るのだ。

とすれば、補選での勝利の決め手になったのは鈴木氏ということになる。昨年12月に安倍首相に官邸で宗男氏に面会し、長女の貴子氏の自民党入りを決めた成果が早々と出たわけだ。

実際に北海道テレビによる24日夜の開票中継で、鈴木氏は極めて上機嫌な様子で自民党議員らと最前列に座っていた。「宿敵」ともいえる中川郁子衆院議員とも、時折ほほ笑みあう余裕すら見せた。野党側から与党側に移って最初の選挙は、鈴木氏にとってある意味で賭けだった。ひとまず出だしが好調であることに、鈴木氏は満足したに違いない。

北海道第5区の補選には、敗者はいない

一方で選挙に負けた野党側も、事実上の勝利宣言をしている。

「選挙結果は残念だけど、当初圧倒的に自民党有利というところを横一線まで押し上げてかなりのところまで自民公明を追いつめた。野党共闘の力が発揮されたと思う。前向きに受け止めている」。これは投開票後に共産党の小池晃書記局長が述べた言葉だ。野党共闘を次期参院選に繋げようという意欲にあふれている。

要するにこの北海道第5区の補選には、敗者はいないということになる。まるで負けを認めた段階で、戦いの舞台から蹴り落とされてしまう、という思いもあるのだろう。反対にいえば、確固たる勝者もいないのだ。そんな不思議さを漂わせたまま、7月には参院選が行われる。冒頭にも記したが、安倍首相は衆参同日選というカードを切りたくなるのではないだろうか。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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