“ぶつからない車”を目指すメーカーの事情 先進装備が普及段階に
自動車業界では先進的な技術や装備はまず、各社の高級車モデルや戦略車にオプション設定され、徐々に採用車種を広げ、必要に応じて標準装備化されていく。最初は高いコストも量産効果や技術の進化などによって下がっていくからだ。今ではどんな車種にもほぼ標準搭載されているエアバッグやABS(アンチロックブレーキシステム)は、最初は高級車のオプション設定が始まりだった。
こうした流れを踏まえると、アイサイトやイーアシストのような衝突防止機能を備えた安全装備は、徐々に業界標準となっていく可能性が高い。というのも、自動車メーカーには、「歩行者の死亡事故を一段と減らす」という至上命題が与えられているからだ。
かつてオプション装備だったエアバッグやABS(アンチロック・ブレーキ・システム)、ESC(横滑り防止装置)が標準装備されるとともに、衝突した場合に乗員を守る車体構造技術の発展なども加わって、乗車中の死亡事故は減少している。警察庁の統計によると自動車乗車中の交通事故の死者は2001年に3711人だったのに対し、11年には1442人と6割も減った。
一方、歩行中に交通事故に遭い死亡した人は01年が2456人だったのに対し、11年には1686人まで減ったが、減少率は約3割にとどまっている。自動車メーカーが“ぶつからない車”を実現すれば、歩行中の交通死亡事故は一段と減る可能性がある。
また、自動車メーカーにとって先進安全装備は目先、差別化にもつながる。スバルの場合、「アイサイト」は販売台数の押し上げ要因になっている。最量販車種である「レガシィ」のアイサイト搭載率は9割にも上り、昨年末に発売したインプレッサの搭載率も高いという。アイサイト目当てに他社からの乗り換えも増えている。
黎明期を過ぎ、導入期を迎えた衝突防止システム。5~10年後にはかつてのエアバッグ、ABSのように幅広い車種に標準装備になっているのかもしれない。
(又吉 龍吾 =東洋経済オンライン)
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