「長期投資」とは、いったい何年のことなのか 誤解だらけの投資知識では死ぬまで勝てない

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「個別株投資でも、長期投資だから持ちっ放しにするのが正しいと思っている人がいる。しかし、それも長期投資に対する誤解だ。株価が妥当な価格を大きく上回ったら、そこでいったん売却して利益を確保する。それは、長期投資を標榜する投資信託の運用担当者であっても、常に行っている。

ただ、マーケット環境の悪化によって、本当に良い企業の株式が売られて株価が急落している時は、その企業のビジネスを応援する意味も込めて、安値をしっかり買いに行く。長期投資だからといって、意固地になって絶対に売らないというのは、おかしな話」。

ビジネスモデルが古くなった会社の株はどうする?

かつて資産株の王道だった東京電力株は、東日本大震災の影響で株価が急落した。それ以前から保有している投資家は、恐らくいつか株価が自分の買値まで戻ってくることに一縷の望みを託しているかもしれない。だが、原子力発電に対する批判、再生可能エネルギーの普及、電力販売の自由化など、同社を取り巻く環境は大きく変わり、かつてのビジネスモデルは、もはや通用しなくなりつつある。

そうである以上、旧ビジネスモデルの上に乗って形成された株価は水準まで戻るかどうか、戻ったとしてもあとどれだけの時間を要するのかは、誰にも分からない。

「ビジネスモデルが大きく変わった銘柄は、そもそも最初に投資した時の前提が崩れているのだから、長期投資といってもいったん、ポートフォリオから外すのが常識だ」。

「長期投資」といえばすべてが正当化されるわけではない。個別株式にしても、投資信託にしても、長期投資の本質をしっかり見極めて投資するべきだろう。

鈴木 雅光 JOYnt 代表、金融ジャーナリスト

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すずき・まさみつ / Masamitsu Suzuki

1989年岡三証券入社後、公社債新聞社に転じ、投信業界を中心に取材。2004年独立。出版プロデュースやコンテンツ制作に関わる。著書に『投資信託の不都合な真実』、『「金利」がわかると経済の動きが読めてくる!』等。

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