被災者ケアだけでなく「支援者ケア」も重要だ 支援者は自分自身を守る方法を心得ておこう

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このように、周囲の人が亡くなり、偶然に自分の命が助かってしまった故のどうしようもない罪悪感を「サバイバーズ・ギルト」と呼ぶ。1995年の阪神・淡路大震災や2001年の同時多発テロ、2005年の福知山線脱線事故、2011年の東日本大震災などで注目された感情である。特に東日本大震災の後には被災者だけでなく、ボランティアとしてかかわった人々や医師、マスコミ関係者や消防隊員、警察官の間にもこうした感情が広がった。この感情が長く続くと、心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病を発症し、専門的な治療を必要とする場合がある。

熱い気持ちだけで飛び込むのは危険

一例を紹介しよう。東日本大震災のボランティア活動に参加したAさん。阪神・淡路大震災の際、ボランティア団体にお世話になった経験から、今回は自分が役に立ちたいとの思いを抱いて震災直後に現地入りした。瓦礫の除去作業を担当しながら直接的、間接的にトラウマを体験する日々が続き、毎日ほとんど休憩を取らないままぶっ通しで働き続けた。

ある時ふと、眠りの質が落ちてきたことに気づいた。頭痛。そして取れない疲労感。被災者の苦しみが寝ても覚めても頭から離れない。自分が頑張らねば。だが思考が働かない。人の話が頭に入らない。イライラして訳もなく涙が出る。様子がおかしいと周囲が気づき、心療内科を受診した結果、気分の落ち込みが強いことを指摘され、抗うつ薬を処方された。

Aさんの場合、早期にケアを受けたため、その後は回復へと向かったが、長引くケースも数多く報告されている。

最近はSNS等により災害状況の詳細が瞬く間に伝わる。現地の悲惨な状況が手元のスマホで刻一刻と伝えられると、真面目な私たちは拡散に応答するだけでは力足らずと感じてしまい、「もっと何かしなければ申し訳ない」との思いにかられる。この時点ですでに間接的なサバイバーズ・ギルトが見え隠れする。

実際、災害支援を通じ、私たちは「人のお役に立てている」との充足感を得ることができるし、そこでの豊かな経験が人間としての幅や視野を広げることにもつながるだろう。しかし、熱い気持ちだけで現地に飛び込むと、Aさんのように痛い目に遭ってしまう。ではどうしたらいいのか。

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