一流アスリートを転落させる「2つの呪縛」 バドミントン男子の賭博問題で考える
なぜ、一流スポーツ選手らは道を外してしまったのか。アスリートの育成に詳しい文教大学国際学部の小林勝法教授は「多くの人は、スポーツによってよりよい人間形成を遂げている」と前置きしつつ、指導者など選手にかかわる大人たちの二つの考え方を理由に挙げる。
大人の成果主義 一筋主義が原因
一つ目が「成果主義」だ。
「小中高の部活動における勝利を求めすぎる傾向が一つの弊害。保護者や学校関係者が期待し、顧問は結果を残さなければと躍起になるあまり、練習時間が延びて学習時間が確保できない」もう一つが「一筋主義」。本来、子どもは複数のスポーツを楽しんだり、文化的な活動などをしたり、いろいろすべきだと小林教授は考えるが、
「日本人はひとつのことをやり遂げるという“一筋”が好き。それらを要因に、得意なスポーツさえしていればいいという風潮になり、社会の常識や公正性を身につける機会が失われたのではないか」
小林教授が出会った、高校時代に全国トップレベルだった女子の大学柔道選手は高校時代、寮生活。ほとんど外出したこともなく、週末は「これから遠征だ」と朝になって突然言われるので、自分で何かしら計画を立てたこともないという。
「選手は思考停止になる。忍耐強いが、自分で考える力や主体性に乏しい。幼少時から天才と呼ばれ、抜きんでた存在であれば、なおさらそうなる」
清原被告も桃田選手も「天才」と言われて育ったはずだ。都内の中学校で長年バドミントン部の顧問を務める50代男性教師は言う。
「バドミントンは親がコーチだったりして幼くして始めた子が絶対的に強い。多くは中学から始めるのですが、少年団からキャリアを積んできた子は圧勝する。
ずっと日本の頂点に君臨してきた桃田選手らは、自分は何をしてもいいと思ったとまでは言わないが、強い有能感を持っていたのは間違いない。そこが落とし穴になったのではないか」
また近年は、体育、スポーツ科をもつ高校が全国で約140校に。野球やバスケットボールなどさまざまな部活生がスポーツ推薦で進学するケースが増えたと男性教師は感じる。受験勉強が必要な一般入試を避けたいがために、スポーツ推薦を選ぶケースも少なくないという。