航空機衝突まで議論、原子力規制委の本気度

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航空機落下からテロの可能性まで議論の俎上に--。

10月10日、第4回の原子力規制委員会が開催され、新たな原発の安全基準の柱の一つとなるシビアアクシデント(炉心の著しい損傷などの重大事故)対策規制に関する検討手法などが議論された。

東京電力福島第一原子力発電所の事故が図らずも高い代償を払って証明したように、日本の原発の重大事故対策は国際的にも遅れをとっていた。政府の事故調査報告書にも述べられているが、事故対策の対象範囲が狭く、東日本大震災のように巨大な地震や津波を想定していなかったこと、さらに電力会社の自主規制に任されていたことが規制上の決定的な欠陥となっていた。規制委では、これをいかに抜本的に見直して国際的にも先進的な対策を作っていくかをテーマとしている。


(福島原発事故前、巨大災害は“想定外”だった)

シビアアクシデント対策規制は全体の安全基準とともに、来年3月までに骨子案をまとめ、パブリックコメントを募集したうえで同7月に公布・施行の予定。時間的制約について委員からは、「普通なら5年かけてもおかしくないような内容」(更田豊志委員)、「やや殺人的なスケジュール」(田中俊一委員長)との言葉も出ていた。

今回の委員会で事務方の原子力規制庁がまとめた検討項目では、設計基準を超える「外的事象」として「設計基準を超える自然現象」や「意図的な航空機衝突、テロリズム」が挙げられた。原発は地上に比べて上空からの落下物や攻撃等に対して脆弱とも言われるが、「航空機落下などが起こっても、重大事故にならず、環境への放射能の放出が起こらないような対策が必要」と田中委員長は話す。

航空機衝突が起こっても原発の安全を確保するためには、どのような設備が必要なのか。人為的テロをシャットアウトするためにどんな対策が必要なのか。それらは本当に可能なのか。そうしたことが今後議論されることになる。

安全基準の厳格性について記者会見で問われた田中委員長は、「むやみに基準のハードルを上げるつもりはない。ただ、日本は厳しい自然環境にあることも事実であり、それを踏まえたハードルは譲るわけにはいかない。それで原発の再稼働が遅れてもやむをえない」と述べた。

これまで国際的に後手に回り、手抜かりがあった重大事故対策、防災対策のレベルをどこまで引き上げるのか。国際原子力機関(IAEA)が定める国際基準と同等のレベルにとどめるのか、それとも世界で最も厳格なレベルまで高めるのか。それによって原発再稼働や新増設の可否やタイミング、電力会社のコスト負担も大きく変わっていくだけに、注目を怠れない。

(中村 稔 =東洋経済オンライン)

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