世界経済の減速とストーリーの重要性--ロバート・J・シラー 米イェール大学経済学部教授

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このモデルではすべての景気後退の原因を、「原油、金融政策、生産性、不確実さ、流動性および金融リスク、財政政策」と六つに限定。07年以降の大半の景気減速を、「不確実さと、流動性および金融リスク」の二つだけで説明している。

が、この結論を受け入れるとしても、いったい何が「不確実さ」と「流動性および金融リスク」において大きなショックを引き起こしたのか、またどの程度の信頼度をもって、そうしたショックを予想できるかという疑問が生じる。

ここ1~2年の外的な経済的ショックについて考えてみれば、その重要性の程度が予測できないストーリーが浮かび上がる。中でも圧倒的に多く語られているのが欧州危機だ。OECDの中間評価も「世界経済で最重要なリスクである」としているが、なぜ欧州危機が世界のほかの地域でそれほど重要であるべきなのか。

もちろん、貿易および金融市場のグローバル化はその一つの理由である。が、他国への影響は、市場価格の変動という直接的な影響にとどまらず、心理的な影響も及ぼすのだ。

ストーリーが引き金となった欧州危機

そこで行き着くのが、統計とはかけ離れたストーリーの重要性である。心理学者たちは、人間の思考にはナラティブ的な基盤があると強調してきた。つまり、人々はリアルな人情話に感化され、動機づけられる。たとえば、人気のあるストーリーは道徳的な意味を帯び、悪い結果は倫理感の欠如を反映したものと考える人もいる。

欧州危機は、ギリシャがメルトダウンするというストーリーから始まり、人口わずか1100万人の国の出来事が世界経済を脅かすかのように語られている。しかし、ストーリーの経済的な重要性は金銭的な価値ではなく、むしろストーリーの価値に左右される。

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