世界経済の減速とストーリーの重要性--ロバート・J・シラー 米イェール大学経済学部教授

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ギリシャ危機のストーリーは08年、同国政府が年金の財源不足に取り組むため定年年齢の引き上げを提案し、それへの抗議が拡大したとの報道から始まった。年金改革案の中身が穏やかだったにもかかわらず、ストライキが起こったことで権利意識過剰との報道がされ始めた。

このストーリーは09年にギリシャ国債の価格が上昇し、同国政府にとってさらなる問題になるまでは国際的な注目は浴びていなかった。その後、ギリシャの放蕩についての報道が増え、これが結局、ほかの欧州諸国の危機につながったのである。

欧州外の人の大半は欧州危機をきちんとはフォローしていなかった、と異議を唱える人もいるかもしれない。が、各国のオピニオンリーダーや情報に疎い人たちの友人や親戚が情報をフォローし、支出を手控える雰囲気を作っていた可能性もある。

多くの人はギリシャのストーリーと、07年に起きた不動産と株式バブルのストーリーを重ねたフシがある。この資産バブルは安易な貸し出し基準と、過剰な借り入れ意欲によって起こったが、これが過分な年金給付をするため借金を増やした、ギリシャ政府と重なって見えたのである。ギリシャ危機を倫理的な話としてとらえた結果、同国政府による緊縮策を支持することになり、状況を一段と悪化させる羽目になった。

今回の欧州のストーリーは世界中で共有されており、ユーロ危機が十分に解決されたように見えたとしても、何か新しいストーリーが生じないかぎり、忘れ去られることはないだろう。その際、今回と同様、人々の心の中にあるストーリーを考慮せずに世界経済の見通しを予測することはできない。

(週刊東洋経済2012年10月13日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

Robert J.Shiller
1946年生まれ。ミシガン大学卒業後、マサチューセッツ工科大学で経済学博士号取得。株式市場の研究で知られ、2000年出版の『根拠なき熱狂』は世界的ベストセラーになった。ジョージ・A・アカロフとの共著に『アニマルスピリット』がある。
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