「新興国=生産国」という考え方はもう古い 労働コストで製造拠点は決められない

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マッキンゼー・グローバル・インスティテュート(MGI)の研究によれば、物品やサービス、資金、人、データなどが国境を越える動きは、直近の10年間で世界のGDPを約10%押し上げ、2014年だけでも約7兆8000億ドルを上乗せした。そのうちデータは推定2兆8000億ドルを占め、物品やサービスより大きな影響を及ぼしている。

国際的な流通網が何世紀もかかって発展してきた一方、データの流れがわずか十数年前に始まったことを考えると、驚くべきことだ。

デジタル化は取引される物品、顧客との関係、配送手段など、多岐にわたって既存の秩序を破壊する。また、より多くの企業、個人にグローバル経済に参加する機会を与える。その結果、国家や企業、個人の優位性は再定義を迫られている。

たとえば米国はこれまでの製造環境では不利だったが、デジタルグローバル化の時代では、技術革新の強みを生かせるかもしれない。

このデジタルグローバル化時代では、低コストの労働力を大量に抱え、インフラと教育水準が不十分な新興国は一見不利なように映る。実際、商品、サービス、資金、人、データの流出入に関するランキング(MGI調べ)では、先進国が上位を占めている。

デジタルインフラ構築が課題に

しかし、デジタル化の流れは新興国にも新たな可能性を与えている。中国のアリババや米国のアマゾン、日本の楽天といったIT企業は、世界中の中小企業を「微小な輸出企業」に変えた。新興国企業もITによって世界中の顧客とつながることができるのだ。

今後の課題は、世界のオフラインの人々をつなぐデジタルインフラの構築だろう。2015年末で世界人口の57%はオフライン状態であり、オンライン状態にある人々も多くは簡易な携帯電話の使用にとどまっている。また世界人口の約2割はいまだに読み書きもできない。

デジタルグローバル化の恩恵を受けるために、各国政府はこうしたインフラや教育に投資すべきだ。既存秩序の破壊に目を向けて、内向きな思考に陥ってはならない。

週刊東洋経済4月16日号

ローラ・タイソン 米大統領経済諮問委員会元委員長

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Laura Tyson

米カリフォルニア大学バークリー校教授。ロック・クリーク・グループのシニアアドバイザー。

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