森トラスト章社長、後継に末娘を選んだ裏側 40代の伊達美和子氏、「港区の大家」を舵取り
――後継者に3人の子女の中から伊達専務を選んだ決め手は?
もともと男女年齢区別なし、やる気と能力がある者がやる、ということなんです。長男の場合は、早く独立して自分が社長でやりたいというので、のれん分けしました。次男は最初に勤めた商社でよほど懲りたのか、競争が煩わしかったようです。だから、最初は3人とも後継者になっても良かったんです。そうしたら3人に会社を分けました。
私が森ビルへ行った時も、最初から会社を分ける前提でした。親父の泰吉郎(森ビル、森トラストの創業者・故人)が社長をしていた間は、兄の稔(森ビル元会長・故人)が業務担当で、私が総務担当でした。業務担当と総務担当で意見が違うのは当たり前。仲がいいとか悪いとかじゃないんです。要するにそれはそういう担当だから。
ところが、親父がいなくなったら、同格で2人なんて無理なんですよ。不動産会社なんていくらでも会社を割れるんだから。森ビルは兄へ。(森トラストの前身である)森ビル開発と、自分で作った森ビル観光はこっち。最初からそういう前提でした。
娘の課題は財務や人事など総務系の業務
――不動産業界にはいまだ男社会という側面がありますが、そこは不安視していませんか。
全然。かえって希少価値があって、やりやすいんじゃない? しかも40代でしょ。能力がないとダメですが、能力さえ認められれば、今の経済界では有利じゃないの?
――能力のほうは社長の折り紙付きですか。
業務系のほうは認めている。もう卒業。あとは財務、人事など総務系のほうが課題ですね。そういう消極部門を含め、バランスを取るのが社長でしょ。社長は、やりもしないで勉強しろったって無理。だから社長を譲って、私がしばらく代表取締役会長をやるということです。力をつけ、対外的に信用してもらうまでには若干時間がかかる。
――伊達専務には、帝王学を伝授しましたか。
いや、しない。私も伝授されなかったし。
――若くして責任あるポストに就けて、仕事の中で覚えさせるというのは共通していますね。
ええ。非上場のオーナー会社だから、決めなきゃいけないことは多いから。経営理念として、父の泰吉郎が森ビル時代に作った17箇条というのがあって、根本的な会社のあり方として、私はそれを変えていない。娘もそれを承継している。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら