「ソニー、東芝との提携は必然。世界トップを奪還するためだ」−−シャープ社長 片山幹雄
--シャープのテレビ用パネルの歴史を振り返ると、生産効率がいいガラス面積の大きな工場を他社よりも早く造って、先行者利益を享受してきたといえます。今回の堺もまったく同じですか。
今回の堺工場はダブル、トリプルの世界ですよ。まず第一に、今までの戦略と同様にガラスサイズを一段と大きくして、一度に大型サイズのパネルを大量に切り出す。二つ目は、材料メーカーなどを同じ敷地内に集めた「21世紀型コンビナート」という新しい仕組み。そして、三つ目として、ソニー、東芝という大きなお客さんを持ったことによって、短期間で操業度が上がると同時に部材コストなどでスケールメリットが働く。その三つの強みが重なって、特に40インチ台は世界でも断トツのコスト競争力になる。
--コンビナートによるコスト削減効果はそんなに大きいのですか。
今の工場にはまだたくさんのムダがある。ガラスを例に取りましょうか。ガラスメーカーは作ったガラスを出荷前に洗浄、検査し、梱包して出荷しますよね。そのガラスをうちのパネル工場で開梱して、洗浄、検査してラインに載せるんです。つまり、今はガラスメーカーとうちの工場で同じ作業、工程を2度やっているわけです。しかも、二つの工場の間で輸送費もかかる。こうした重複作業はカラーフィルターなどほかの材料も同じ。だったら、同じ敷地内に工場を造ったほうが、重複する工程が省けて、コストも減らせるじゃないですか。
エネルギーにしても、ガラスメーカーが溶鉱炉でガラスを作るときに発生する熱を再利用したら、ランニングコストは下がる。ガラスサイズを大きくするだけでは、時間が経てば、いずれ追いつかれる。今回のコンビナートは、恒久的なコスト優位性を確立するためのチャレンジ。液晶パネルを世界で最も安いコストで作れる工場、それをひたすら追求した究極の姿が、堺のコンビナートなんです。
--そうした数多くの材料メーカーを堺に誘う以上、新工場の操業度を上げることはシャープの責任でもあった?
そのとおりです。堺には材料メーカーなど取引先14社の進出が決定しています。もしも、工場の操業度が低いままでは、当社だけでなく、そうした堺に投資してくれる企業の経営に、大きな悪影響を及ぼしてしまう。コンビナートでやると決めた以上は、工場の操業度が確実に上がっていく仕組みを作るのが当社の責任。そのことはつねに頭の中にありましたし、そういう重い責任があるからこそ、矢継ぎ早に手を打ったんです。