銀行株の上昇と「海外投資家の買い」が必要だ 相場が再浮上するための「最低条件」といえる

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今回の3月調査で初めて公表される2016年度の想定為替レートの水準が実勢レートと大きく差がなければ売られることはないだろうと思っていましたが、実際に公表された2016年度の想定為替レートは117円台。現在のドル円相場は1ドル111円台です。ここまで乖離すると、さすがに売られるでしょう。

企業の行動はどうしても実際のレートを後追いしてしまう傾向が強い。特に期初から大幅な下方修正につながるような円高水準には設定してこないです。すぐに円安方向に戻ればいいですが、現在の水準が4月いっぱい続くようだと、5月後半からの決算発表シーズンを前に再び売り圧力が強まる展開を想定しておく必要があります。

アベノミクス相場を評価するカタリスト(材料)は円安・株高です。ただ、2015年は円安局面でも特に自動車株がそうでしたが、円安を横目に株価は全然上がらず調整局面入りとなりました。円安と株高が続かなかったのです。株高にならない要因としては、企業の海外進出が昔に比べ増えたため円安メリットを受けづらくなった、といった解釈をよく見ました。

2017年以降は円高・株高シナリオになる

だったら、円高と株安がいつまでも続くと考えるのもおかしいのです。円高でも実は思った以上にダメージは大きくない、と市場が織り込むまでは、あるいは受け入れるまでは円高懸念という言葉が弱気のカタリストになると思います。一方、それこそ企業ベースでは何らかの対応をとってくるはずなので、円高でも業績がさほど落ち込まないと市場が織り込み始めたら、円高・株高局面に移行したことになります。

個人的には2017年以降は、円高・株高シナリオが正解だと思います。今はその大きな境目の小さな動きに一喜一憂しているだけに過ぎません。東京株式市場の売買代金の6割を占める海外投資家にとっては円高・ドル安は追い風です。円高局面の日本株投資では、株価の値上がり益以上のパフォーマンスが狙えるため、どこかで仕掛けてくるはずです。米国企業にとってもドル安は業績改善につながります。

とはいえ、海外投資家が売りを続ける以上、日本株は本格的に上昇局面に入ることはできません。新年度相場に入ったといっても、名ばかりのもので、下値でいくらGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の買いが入っても、海外投資家の売りが続けば焼け石に水です。

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